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柿色のセカイ  作者: 萩乃
29/45

距離

合宿最終日。天気は雨。最後に相応しくない天気だ。





「恋っ!」





真白がお菓子を持って駆け寄ってきた。





休み時間になると、なぜかずっとよって来る。





なぜかっていうより、最近久しぶりに話したからだろう。





友達がいないってこともかかわってくるんだと思う。





「あのね、このお菓子ね、初め甘いのに後から辛いんだよ!面白いからオススメ!」





たんたんとお菓子の話を始める。





「昔から好きだよね、面白いもの」





真白は昔から、面白いものがあるとすぐに飛びつく。





実は面白い顔に生まれたかったとかなんとか。





「好きだよ!なんか!」





「なんかって」





真白との久々の会話で、笑顔が浮かぶ。





これは、きっと、嬉しいことだと思う。




















「では、皆さん。これで合宿終了です。学校に帰ったら感想文を書くので、なにか考えておいて下さい。」





学級委員長の恋は、郁人と一緒に、先生の指示どうり進める。





「バスが迎えにくるまで玄関でお待ちください。それまでは休憩とします」





「おっしゃー」 「菓子食おー」 





2年全体が力を抜く。





「あっ」





恋が急に声をあげる。





「れんっこ?」





あすのがアメをくわえて振り向く。





「外トイレにポーチ置いてきたかも」





「えっ、本当?急いで取りに行ったほうがいいね。着いていくよ」





「いや、大丈夫、すぐそこだから行って来るよ」





「あ、傘ある?事務室で借りてこようか?」





あすのが靴を脱ごうとする。





「いいよ、濡れていく。そこ曲がれば置いてるよ」





「大丈夫?早めにきてね」





「うん」





急がなくちゃ、すぐそこだけどバスがその間に来たら待たせることになる。





「あった・・・!」





トイレの洗面場の上に黒いポーチが1つ置いてある。





早く戻ろう・・・








ピカッ








一瞬空が光る。





雷か。





そのまま濡れてトイレを出る。渡り廊下で1度立ち止まってポーチの水を払う。





「雨、ひどくなってきたか・・・」








ゴゴゴゴゴ  ピカッ








「きゃぁぁぁぁぁっ!?」





空が暗くなって大きな雷をおだてる。





叫び声をあげてしゃがみこむ。





いつも強気な恋も、さすがに・・・





「わ、渡り廊下から出たくない・・・・」





耳を押さえて震えを止めようとする。





その時、





バスが来た。





あ、バスだ。急がなくちゃ。





そのまま震えを押さえ込んで雨に濡れながら走り出す。





頭上では大きな音を立てる雷。やむことはなさそうだ。





怖い 怖い なんで今に限って雷がくるの!?





「柴田!!」





すると郁人が濡れながら走ってくる。





あ、郁人・・・・





「なにやってんの!急げ!バス来た!」





「ご、ごめん、忘れ物取ってきた!」





「とにかく走るぞ!」





2人とも、髪も服もぐったりしたまま水溜りを飛び越える。





「あっ!」





飛び越えようとした瞬間、恋が転ぶ。





幸いコンクリートの上だ。





「うわっ、大丈夫か!?立てる?」





郁人が恋の手を引っ張る。





「背負おうか?」





「え!?」





「乗れ!」





の、ののの乗る!?郁人に!?





動揺のあまり体の身動きをとめる。





それとともに、足から赤い血がたれる。





「いった!」





「やっぱ乗れ!」





「い、いい!そのまま走る!」





郁人の背中に乗ってるとこなんかみんなに見られたくない!





ってのはどうでもいいけど、迷惑かけられないよ!





走ろうとした瞬間、後ろから手を勢いよく引っ張られる。





「強がるなよ!!」





郁人の大声でビクッと体が驚く。





「走るぞ」





無理強いに背中へのせられる。





「うりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」





「ぎゃあっ!?」





急に全速力で走り出す。





そのままバスに濡れた体で倒れこんだ。





「柴田と新山・・・、いますっ!」





バスへの上り口で挙手えおした。





「あ、あなたたち!どうしてそんなに濡れるの!座席には座れないわ!」





女教師がメガネを持ち上げて一番奥の床を指差す。





どうやら座れということだ。











その日は、郁人と床にタオルを敷いて座っていた。





長旅のせいか、疲れて眠っていたらしい。





あすの情報としては、写メをたくさん撮られたとか・・・





こんなことがあったけど、





郁人との距離が近付いた気がするんだ。



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