悩み
「痛い・・・」
ほうき片手にうつむいてつぶやく。
「柴田さん、掃除はどうぞ真面目に」
由香さんが手をパンッと一度叩く。
無理は無い。
今は合宿舎清掃の時間。掃除といって、みんな真面目にしている。
なのに私は手を動かさなかった。
「お腹痛いの? 事務室行く?」
あすのが背中をさする。
「そっちの痛さじゃない。ありがとう。何が痛いんだろう・・・」
「胸」
「え?」
由香さんがほうきを動かす手を止めた。
「胸が痛むのではないですか」
由香さんの真剣な表情に心が動かされる。
「人は気になることがあると悩んでしまいます。あなたは今そんな状態なのですよ。何か悩んでいませんか?」
「悩み・・・」
その言葉は的中した。
きっと、私が郁人に対して思っていることだ。
どうして真白のことを詳しく知っているの?
って。
「悩むなら、元に調べに行くとか、聞くとかっていう手段があります。どうか解決してくださいね」
解決・・・
解決・・・
するほどの大きなことじゃないけど・・・
「ゆ・・・、」
調べてみるが早い。
「えっ・・・!?」
「由香さぁぁぁぁぁぁぁん!」
恋は由香さんに飛びついた。
「し、柴田さん!?」
「あっ、コラ掃除中!!」
周りを気にせず由香さんを抱きしめた。
的をつかれて、
励まされて、
どれだけ私は幸せなんだろう。
由香さんの優しさは、ずっと心の中に残っていた。




