木の香り
「柴田ぁ」「れんっこぉ」「柴田さん」「柴田」「柴田さーん」
皆いっせいに私を見つめてくる。
「いい加減きげん直せよ」
「直ってますー。」
「もー、根に持ちやすいなぁ」
「承知の上。」
昨日の夜のことをネチネチ気にする私を心配してくれている。
ま、まぁ、そういうところは良い人達だけど。
「ほんとに直ってるからね」
「ほんと?」
あすのが心配そうに、眉をひそめて眺める。
「うん、もう全然! ただ・・・」
「ただ?」
「郁人だけ恨んでる。」
イチゴオレを吸い込みながら、郁人をにらんだ。
「まぁそりゃそうだね。」
「それはそれで納得」
「でしょ!?」
「おいっ!!」
郁人が急に立ち上がる。
「確かに外へ連れ出した俺が悪い!だが、ちゃんと誤っただろぉ!?それをお前は長々と・・・」
「人からじろじろ見られて嬉しいんですか」
「う・・・」
朝食中見苦しいものであったから、郁人を座らせた。
「まぁいいや。仲良くしましょう郁人くん」
「お・・・、おう!」
「あの時、悪いことしたわけじゃないしね。」
喜ぶこいつに笑顔を見せた。
コロコロ変わるヤツ(笑)
「あ、ねえ れんっこ」
「ん?」
「あれ、真白ちゃんじゃない?」
「えっ」
食べ終えた食器を片付ける真白。
ほのかに笑顔を見せた。
何も返さないのが悪くて、無表情で手を振った。
彼女は驚くように、目を丸くして笑っている。
「可愛い人だね。」
「うん、1年のとき、男女から人気あったよ。男からは可愛いって理由で好かれて、女からは雰囲気が良くくて明るいって理由で好かれてた。」
「へー、今もそうじゃないの?」
「それは分からない、最近会ってなかったしね。」
「なんで?」
「え?」
なんで・・・って、それは・・・しょうも無い理由だから・・・
「ケンカしてたんだとさ。」
「そーなの!?」
郁人がさりげなく言葉を入れてくれた。
感謝! 自分ではどうにも出来ないので!
まぁ、れっきとした嘘では無いよね。
「そんなところ」
「仲直りしてね!」
「うん、ありがとう」
本当にあすのは天然だけど良い子だなぁ。
ジュースを勢いよく吸い上げ、食器を持ち上げた。
・・・・早く休み時間に寝込みたくて・・・・
小走りで部屋への階段を駆け上がり、部屋をバンッと開ける。
「木の香り」
木で出来た建物は新しく、良いにおいがする。
そのままベットへ入り、巨大うさぎの抱き枕を抱いた。
学校の制服を着たままで寝ると、心地が悪い。
でも、すぐに寝たくて、スカートが上がったって関係なかった。
昨日の夜の疲れと、朝食の重みが体に乗りかかる。
それも関係ない。
恋は周りの状況も気にせずに眠りについた。