深夜
眠い・・・今日の夜は疲れた・・・。
真白を送り届けてからも疲れたまま・・・。
恋はふとんと家から持ってきた、巨大うさぎをいっぺんに抱えた。
「柴田っ❤」
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
どちたも小声なのに大声。
声側の方を見ると、やはり郁人。
「暇ー?」
「暇なわけなかろうがっっ!今から寝るんじゃいっ!」
「んじゃ暇だね。」
「は・・・!?」
ベットの上で足をジタバタさせた。
隅っこに寄って一安心かと思いきや、
郁人が恋を引きずり出した。
「いやー、変体ー!」
「しーっ!」
意味分からんっ!
何でこいつは私の腕掴んでるワケ!?
気色悪いわぁ!!
「い―――やぁ――――!!」
「仲直りすんの?」
「さぁね、するんじゃない」
「いつ?」
「さぁ、合宿中じゃない?」
「ほんとにすんの?」
「さぁね、するんじゃない」
ベランダに連れ込まれて暇そうな会話を続けた。
「まぁはっきり言うと、俺らが首突っ込むとこでもないな。」
「だから、ほっといてー」
「・・・。」
暇なのか?って聞いといて、暇にしてんのあんたじゃん。
と、言いたいところですが、言えないので。
「・・・あ、ありがとう」
「へ?」
照れくさい・・・
「もっかい言って」
「え・・・、え!?嫌!」
「言え」
「嫌」
「言えー」
「いーやーっ!」
黙れ黙れ黙れ!
空気読めよなっ!!
「し・・・」
「し?」
「心配してくれてどーも!」
嫌ー!キモいキモいキモい!
どーもとかキモい!
自分で言うから余計に・・・・・
恋はそっぽを向いて、海を眺めた。
「ぶっ!」
「?」
急に郁人が吹き出した。
「お前でも礼とか言うんだなっ!」
いきなり無邪気な笑顔を見せる。
いつも自分が背の高い郁人に勝ったような気持ち。
でも今は、従えられているような気持ち。
私は郁人を見上げることしか出来なかった。
「やっらしー」
窓の方から班の人が・・・・
「なっ、聞いてたの!?」
「聞こえないワケないじゃん、さっき大声出してたんだから。」
「早く寝ないと、『新山くんと柴田さんがイチャついてまーす』って言うよ!?」
「実はそんな関係だったんだ・・・」
「男女同じの部屋となると、すぐこうなりますね。」
4人がケラケラ笑っている・・・・
ムカつく・・・・
どれもこれも郁人のせいなんだけど・・・!
「ため息つく時すらない―・・・
恋が情けない顔で合宿先の建物を見渡して息を止めた。
校舎の窓から生徒が見つめている。
こちらを。
え、え、え、み・・・、
「見るな―――!!!」
6月19日、深夜12時。
恋を大きくて甲高い声が、どこまでもどこまでも響いていった。