夜の一本道
「おー、こんな暗いんだ」
「はい・・・・」
今は夜。宿泊先の建物の裏。
少し進んで右の暗い道を行くと、それ以上に暗い道。
「面白そーぉ!!」
「あ、あすの!」
1人盛り上がるあすのを背に、小刻みに震える。
「そんなに暗くないわね」
「!?」
由香さんが黒髪をサラサラと揺らしながら呆然と立ち尽くす。
「本格的だなぁ!俺怖くなってきちった」
雄太くんが曲がった笑顔を空に向ける。
そりゃ怖いですよ!
心の中であっかんベーをした。
郁人はというと・・・だけど。
「なぁなぁ早く行かねぇのー!?待ちくたびれたんだけどー!」
「まだだ!全員集合せねば始められんだろう。」
「・・・へーい」
おぉおぉ、楽しそうですこと。
ま、私は吐き気が今襲ってきてますが。
「お、全員集まったな。それではキモ試しを始めます。ルールは簡単。1班づつ道の行き止まりまで行って帰ってくるだけだ。おどかし役はいないから十分に怖がってこーい」
「はーい」
はいはい、怖がってきますー
心底強気な言葉言ってもさ、どーせ私はキャーキャー言って帰ってくるんだ。
私は2班だから・・・1班が帰ってきたら行けばいいんだな。
1班が帰ってきた。
さあさあ感想を聞こうじゃないか。
「あー、ヤバかったー、誰もいないってのがヤバいよね」
「だよねー、6人いても怖かったもん」
「めちゃくちゃ軽いトラウマになりそうだわ、良い思い出ー」
軽く・・・トラウマ・・・・!?・・・
とっ トトトトトトトラウマは嫌だよ。
ま、まぁ、このキモ試し行かなかったら私の強気キャラが廃る!
「んじゃ2班行くかー!」
郁人の叫び声が森じゅうに広がる。
その時吐き気がした。
でも我慢した。
頑張れる気がしたから。
何でかっていったら、
郁人が手を引っ張ってくれたから。
郁人が後の4人も走らせて、私をぐいぐい引っ張っていく。
一瞬私は、
暗いこの夜道の森を、
とてつもなく明るい一本道に見えた。
それは前に広がる景色だった。
昼でも朝でもない夜道。
狂ったような自分の眼中はただただ正面を見つめていた。




