脱出
床に座り込んでうつむいていた。
「柴田・・・」
郁人が近づいてくる。
頬を触られた。
「い、郁人・・・!?」
その瞬間。
「お前なぁっ、アホか! 来んなって言ったろ!」
ほっぺたをつねられた。
「ふぇ!?」
「何かっこつけて戻って来てんだよ!」
「い、いや・・・」
「そのうえ戻ってきて抗議したら怖いだぁ?」
「や、えと・・・」
「小せぇ問題なんだから俺がなんとかやっとくっつーの!」
「うー・・・」
いつもになく恐ろしい・・・・こんな郁人は始めてみる・・・かな。
「返す言葉もございません・・・。」
「だろ!」
確かに小さい問題だ。
こんな問題はちゃちゃっと済ませるもの。
「でもさ、もううぇぼしー自身がやってないって言えば済むことじゃない?」
「そうにもいかないだろう、嘘をついてると思われる。」
「そっか」
どうにかなっらないかな。簡単な方法―・・・・・・
「ま、お前はよく頑張ってるよな。学級委員としては。」
そう言って私の頭をなでた。
「人としてやってるよ。」
にらむような顔で郁人が私の頭へ置いた手を叩いてやった。
「はははっ、ごめんごめん」
無邪気な笑顔。それはきっと誰にでも見せる。
そう思うと、なぜだか自分が嫌になる。
ヤキモチとかじゃなくて、自分が嫌いになる。
これは、どう表せばいい感覚なんだろう。
「よしっ」
急に郁人が声をあげた。
「え、何」
「このまま脱出するか!」
「は、なんで!?抗議するために来たんだよ!?」
「いいじゃん、意味はないけど!」
「え―!」
2人で昼間の学校を駆けだした。
私はこの時、前に郁人が保健室へ運んで行ってくれたくれたのを思い出した。
私の手を引っ張ったりするのはいつも郁人のような気がする。
郁人の走る背中を見つめながら手を握り締めていた。