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幼馴染は振り向かない(1500PV越えありがとうございます)  作者: 一年目の平凡な中小企業の社長


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第4話:新たな二人

 女子校の教室は朝から独特の熱気に包まれていた。

 新しい制服、新しい友達、新しい会話。

 みんな、期待に胸を膨らませて「新しい自分」を演じている。


 私は、俯いたまま自分の席に座った。

 泣き腫らして赤くなった瞼を、少し長めの前髪で隠す。


(……最低だ、私)


 自分を変えたいなんて格好いいことを言って、結局、タカシがいないだけでこんなにボロボロになっている。

 机に広げた真っさらな教科書が、涙の跡で少しだけ波打った。


「ーーあれ、ユキちゃん?どうしたの、その目」


 不意に上から降ってきた声に、心臓が跳ねた。

 顔を上げると、昨日お弁当を一緒に食べた、同じクラスのマサコが心配そうに覗き込んだ。


「えっ……。あ、ううん、なんでもないの。ちょっと、花粉症かな」


 咄嗟についた嘘。

 マサコは私の隣の席に腰を下ろすと、少しだけ声を落として言った。


「……そっか。辛いね、花粉症。でも、もし『失恋』とかだったら、いつでも聞くよ?」


「えっ」


 心臓が止まるかと思った。

 動揺する私を見て、マサコは少し大人びた笑みを浮かべた。


「昨日、駅の改札で見たんだ。ユキちゃん、すっごい寂しそうな顔した私服の男の子に見送られてたでしょ。……彼氏?」


「あ、……違う、の。ただの、幼馴染で……」


「そっか。幼馴染、ね」


 マサコはそれ以上追求せず、自分の鞄から清潔なハンカチを取り出して、私の机に置いた。


「わざわざこの女子校を選んで来たんだもん。何か。理由があるんでしょ?」


 マサコが真っ直ぐに私を見て、続けた。


「理由は知らないけど……泣くほど寂しいのに、ここで頑張ろうとしているユキちゃんのことは、嫌いじゃないよ。応援してる」


 マサコは、私がタカシに頼りきりだったことも、自分を変えたくてこの学校に来たことも知らない。

 知らないはずなのに、彼女の言葉は、私の震える背中を温かく押してくれた。


 私は、渡されたハンカチをぎゅっと握りしめた。

 鼻の奥がまだツンとするけれど。

 彼と同じ学校に行かなかったことを、後悔だけで終わらせたくない。


「……ありがとう、マサコちゃん」


 窓から差し込み春の光

 私の知らない駅までの定期券は、後悔だけじゃなく、こういう出会いも運んで来たのかもしれない。

 ほんの少しだけ、前を向けそうな気がした。


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