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幼馴染は振り向かない(1500PV越えありがとうございます)  作者: 一年目の平凡な中小企業の社長


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2/23

2話:もどかしい二人

ご覧いただきありがとうございます。

本作は全年齢対象の[恋愛]です。

短いお話ですが、お楽しみいただければ幸いです。

【タカシ】

「それ、どこのブランド?お洒落だね」


休み時間。

隣の席の女子に声をかけられた。

名前もまだ知らない彼女は、僕のパーカーの紐を面白そうに眺めている。


「あ、いや……適当に選んだだけで」

適当、というのは嘘だ。

今朝、ユキにどう見られるかを一時間も悩んで決めた服だなんて、口が裂けても言えない。


周囲を見渡せば、派手なシャツの男子や、着崩したカーディガンの女子。

私服校という自由。

けれど、僕を縛る制服も、僕を知るユキもいないこの教室で。


僕は自分が、ただの「どこの誰でもない男の子」になったような心細さに襲われていた。


【ユキ】

「ユキちゃん、お弁当一緒に食べよ!」


華やかな笑い声に囲まれて、私は無理に口角を上げた。

揃いの紺のブレザーを着た女の子たち。

みんな可愛くて、優しくて。

なのに、私の心だけが、冷たいガラスケースの中に閉じ込められたみたいに静かだった。


「ねぇ、ユキちゃんって好きな人いるの?」


デザートに旬の苺を頬張りながら、新しい友達が顔を覗き込んできた。

好きな人。


その言葉を聞いた瞬間。

ホームで小さくなっていく、あの頼りないパーカーの背中が脳裏をよぎる。


「……いないよ。今は、勉強で精一杯かな」


嘘をつくたび、胸元に光る金色のボタンが、チクリと心臓を刺す。

このブレザーは、タカシのいない街に行くための私の鎧。

脱ぎ捨ててしまいたいのに、私はそれを、強く握りしめる今年か出来なかった。

【タカシ】

自分の部屋に戻り、僕は迷わず部屋の明かりを消した。

暗闇の中、窓の外をじっと見つめる。


数メートル先。

すぐ隣の家の窓から、漏れてくる光がある。

あそこには、ユキがいる。


さっきまで彼女が着ていた、あの冷たい紺色のブレザーは、今ごろ椅子の背もたれにでも掛けられているのだろうか。

制服を脱いだ彼女は、僕の知っているユキに戻っているのだろうか。


僕は、机の上に置いたスマホを手に取った。

今日、教室で女子に話しかけられたこと。

本当は、すごく居心地が悪かったこと。

全部ユキに言いたくて、画面をなぞる。


けれど。

僕が私服で所在なく過ごしていた時間に、彼女は僕の知らないところで、僕の知らない誰かと笑っていたのだ。


そう思うと、親指が動かなくなった。

僕はただ、隣から聞こえてくる微かな生活音に、耳を澄ませることしか出来なかった。

【ユキ】

カチリ、と隣の部屋の明かりが消える音がした。


私は、開けようとしていたカーテンの隙間から手を離す。

窓を開けて、いつものように「タカシ、起きてる?」と声をかける。

昨日まで当たり前だったその勇気が。今の私にはなかった。


脱ぎ捨てた紺のブレザーが、月の光を浴びて鈍く光っている。

これを着ている間の私は、もうタカシの幼馴染じゃない。

ただの「女子高生」という記号に変わってしまう。


スマホの画面が明るくなった。

タカシからの連絡かと期待して、すぐに消沈する。

届いたのは、今日新しく友達になった子からの、スタンプだらけの賑やかなメッセージだった。


「……バカみたい」


私は膝を抱えて、暗い部屋で一人つぶやく。

タカシは今、何を考えているんだろうか。

あの私服、本当はすごく似合ってた。

私よりずっと、大人に見えたよ。

伝えたい言葉は、窓一枚を超えることができず、私の部屋の冷たい空気が溶けていった。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

感想、ブクマ、高評価いただけると嬉しいです。喜びます(^ ^)

次回更新は一週間後の予定です。

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