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第15話 決闘 その2



「開眼」


 ツルスベスキーは俺に向かって光を放つ。


「鼻毛ナンバー392『鼻毛マント』、発動!!」


 柔らかい産毛は手触り滑らかなマントに変形する。

 ポケットの中で溶けている銀貨をそのマントの表面にコーティングする。


 迫りくる強烈な光。


 マントで全身を包み、光の中に突撃する。


「なっ!!」


 光はマントに当たって反射し、ツルスベスキーに跳ね返る。

 眩しさに目を閉じるツルスベスキー。


 鏡に物が映るのは銀のコーティングによるものだ。銀は光をほぼ100%反射する。

 銀で表面をコーティングしたこのマントも光を反射するのだ。


 そのまま前進し、右こぶしをツルスベスキーの頬に打ち込む。

 後ろに吹き飛ぶツルスベスキー。


 ここで決める!


「鼻毛ナンバー074『推しの()ん』」


 ツルスベスキーに鼻毛の剣を打ち下ろす。


 巨大な目が上から飛び込んできて、ツルスベスキーを守る。

 目は真っ二つになり、光の粒になって消える。


「さすがですね。自分のスキルや周りの環境を活かして、どんな不利な状況でも切り抜ける。何十年も戦い生き残っているだけのことはありますね。あなたは危険だ。僕の最強スキルで倒します」


 戦闘態勢を整えたツルスベスキーが聖典を開く。


「聖典365ページ『最後の聖戦』」


 聖典から凄まじい量の光が空に向かって吹きあがる。

 空全体が光で満ちて辺り一面を真っ白に照らす。


 ズドォッン!!


 天空に広がった光は一本と雷となってツルスベスキーの頭上に起きる。

 眩い光に全身を包まれるツルスベスキー。

 光は形を変え、全身を覆う黄金の甲冑となる。

 右手には黄金の大剣を握っている。


「これが僕の最強スキルです。あなたでもこのスキルの前には何もできません」


 ツルスベスキーが俺の前に現れる。

 黄金の大剣を振り下ろす。


 大剣を推しの毛んで受け止める。

 全身に衝撃が走る。

 すさまじい破壊力。


 推しの毛んは真っ赤になって崩れ落ちる。

 後ろに飛び跳ねて、大剣を避ける。


 ツルスベスキーは大剣を下から上に振り上げて追撃してくる。

 攻撃力だけじゃない。

 スピードまで上がっている。


「鼻毛ナンバー068『聖毛(せいけ)ん・鼻毛カリバー』、発動!!」


 鼻の右穴の奥にある極太鼻毛を一本引き抜く。漆黒の大剣に変化する。


 ツルスベスキーの斬撃を鼻毛カリバーで受け止める。


 だが鼻毛カリバーが灰になって崩れ落ちる。

 ツルスベスキーは大剣をそのまま俺に向かって振りぬく。


 後ろに下がって避けるが、大剣が俺の右肩をかすめる。

 肩に焼けるような熱を感じる。

 血は一瞬で蒸発し、傷口は火傷跡になる。


 ツルスベスキーの大剣が俺の喉に向かってくる。


「鼻毛ナンバー006『盗賊のナイフ』、発動!!」


 鼻の右穴の入り口付近の小さな鼻毛を引き抜いて、ナイフを作る。


 大剣をかわしつつ前進し、ナイフをツルスベスキーの腹に打ち込む。


「なっ!」


 思わず声がでる。

 ツルスベスキーの甲冑に傷はついたが、ツルスベスキーの体にまで届かない。

 ナイフは熱で真っ赤になった後に灰になって崩れ落ちる。


 ツルスベスキーの左拳が俺の腹にめり込む。

 口から血がでる。

 殴られた箇所が焼け跡になる。


「このスキルは最強です。攻撃力、防御力、スピード、全ての能力が向上します。さらにこの鎧は自己再生能力があります。ノーズさん、あなたにこの鎧は貫けない」


 さっき俺がつけたナイフの傷が治ってゆく。


「あとどれだけ私の攻撃を防げますか?」


 ツルスベスキーの大剣が迫ってくる。


「鼻毛ナンバー846『鼻毛ブレード』、発動!!」


「鼻毛ナンバー386『鼻毛サーベル』、発動!!」


「鼻毛ナンバー726『鼻毛メイス』、発動!!」


 鼻毛で作った武器はツルスベスキーの斬撃を一度受けるだけで灰になっていく。

 しかも斬撃を完全には受け止められない。

 致命傷は避けているが、ツルスベスキーの大剣が俺の体を少しずつ切り刻んでくる。


「どうしました? 武器がどんどん脆弱になっていますよ?」


 話しながらも斬撃を止めないツルスベスキー。


「鼻毛ナンバー478『鼻毛ダガー』、発動!!」


「鼻毛ナンバー689『鼻毛大鎌』、発動!!」


 足元には鼻毛の灰が塵積っていく。

 体の傷もどんどん増えてゆく。

 ツルスベスキーの攻撃を防げる鼻毛はそれほど多くない。

 それに鼻毛から武器を作るときにかなりの魔力を消費する。


「もうやめてください! 私は大丈夫ですから! 降参してください!!本当に殺されてしまいます!!」


 悲痛の表情でエマが閲覧席から叫ぶ。


「まだです! 俺はまだやれる! エマ王女、俺はあなたを助けると約束しました!!」


 ツルスベスキーの斬撃を防ぎながら叫ぶ。


「無駄は抵抗ですね。あなたでは僕に勝てない。いい加減諦めたらどうですか?」


「俺は絶対にあきらめない! 鼻毛と同じだ!!」


「意味が分かりません」


「鼻毛は何度引き抜かれても懲りずにまっすぐ生えてくる。どうせ引っこ抜かれるからと生えるのをやめた鼻毛をお前は見たことがあるか? それと同じだ」


「ちょっと何言ってるか分かりません」


「何度挫折しても、命ある限り、諦めずに前に進もうと努力する。それが鼻毛道!!」


「戯言ですね。時間の無駄はしたくありません。防御を止めて、僕に斬られてください」



「断る! 鼻毛ナンバー641『鼻毛(フェンス)』、発動!!」


 鼻の左穴の入り口付近の鼻毛を引き抜いて地面に埋める。地面から鼻毛の柵がツルスベスキーの前に現れる。


「ついに武器を作れる鼻毛がつきましたか。こんな柵で僕は止められません」


 大剣を横になぎ払い、柵を真っ二つになる。

 柵は灰になって地面に積もる。


 脚に衝撃が走る。

 ツルスベスキーの足が俺の膝にめり込む。

 柵のせいでツルスベスキーの下段蹴りが見えなかった。

 足をすくわれて地面に叩きつけられる。


 鼻毛に手を伸ばそうとする。

 ツルスベスキーの足が俺の手を踏みつける。


「終わりです」


 俺の胸にむかって大剣を突き下ろすツルスベスキー。


「ノーズさぁぁぁぁぁんっ!!!」


 エマの悲痛な叫び声が闘技場に響き渡る。


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