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第6話 男の子と告白(2)


通常の学校生活において、校舎裏に行くことはない。

高校生にもなって、かくれんぼをすることも無いし、桜と蜜柑の木とアスファルトと倉庫しかない所に何をしに行くのか。


桜が咲いていなければ、蜜柑泥棒をする時にしか用事など無いと思っていた。まさか、ラブレターの結果発表会場になるなんて予想出来ない。


当然、蜜柑泥棒をしたことはなくて。

何の為に校舎の隅で実をつけているか分からない蜜柑が、どんな味がするのか気になっているだけ。丁度今時、大きい実をつけている頃だから。

単なる好奇心だ。



──ってああもうッ、他事を考えるのも限界っ!


もうすぐ校舎裏に着いてしまう緊張で、胸が押しつぶれている。心臓の鼓動が肋骨に響く。


帰りたい。土に還りたい。私はミミズ。

ミミズに足は無いから、足どりも重い…


「頑張ってー。はい足を前に出す。進む!右!左!」

「うぅ……」


目を閉じて背を押されるままに歩いているので分からないけれど、もうそろそろ校舎裏に着いた頃と思う。


「ほら誰か居るよ!三組の、最近転校してきた人じゃん。名前は何だっけ?」


足が更に震える。心臓がドクドクする。

背を押されるままに進んでいれば万事上手く行くはず。何とかなれっ。なってくれっ。


……


更に何歩か進んだところで、背中から三花ちゃんの手が離れる。目はまだ開けれていない。


「ご丁寧にどうも。これは?靴を脱いだほうが良い?」


三花ちゃんの声だ。

靴を脱ぐ?校舎裏だよね?


「ああ、よく来たね。土足で構わないよ。ほら、僕も靴で上がっているし。二人共来るなんて嬉しい誤算だよ」


落ち着いた男の子の声がする。聞き覚えは無い。

高くも低くもない、どこか品のある声。


「残念ながら、私は付き添いで来ただけ。彼女が手紙を見て来たの。ほら、自己紹介しないと」

「い、いっ、一年二組の、企比乃結姫です。よろしく、お願いします……」

「よろしく、企比乃さん。僕の名前は大月太陽おおつきたいよう。一年三組だよ。知ってるかな?」


──全然知らない。


変な顔では無いと信じたい。


「…はじめまして」

「こちらこそ、初めまして。付き添いの彼女とは、どういう関係か教えてくれるかい?」

「私は二城三花。結姫と同じ二組だよ。親友の大事なイベントには参加しないとね」

「親友か。それはいいね」


私も何か話さないと。

頭が真っ白で一文字も浮かばない。目を閉じたままなので、視界も無い。


「結姫ちゃん、まだ目を閉じてるの?失礼だよ」


失礼……?

違う違う!そんなつもりじゃない!


「ごめんなさい。そうじゃなくて、男の子と待ち合わせとか初めてで、緊張してて……」


勘違いされたくなくて、反射的にパチっと目を開く。

目の前、三~四メートル先に彼は居た。

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