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恋についての全てを私は知りたい。 〜癖強JKが超能力で男子の心を読み恋を知る〜  作者: 向夏夜なくの
一部 三章 恋が人に与える影響について

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第40話 諦められない恋心(5)

先輩達が香取さんを追いかけて行ったから教室で二人きり。急に部屋が広く感じる。


太陽君は『やり過ぎたのかな』って不安そうにしている。彼女としては気紛きまぎれさせてあげたい。


「太陽、追いかけるよ。やり過ぎってことは無いから大丈夫。解決するならこうするしかない」

「そうだよね……」


依然として表情は暗い。背中をさすってあげるから元気を出して。


「太陽に元気が無いと嫌なのだけど」

「ありがとう。元気貰ったよ!」

「じゃあさ、今度でいいから倍にして返してね」

「うん、分かったから笑」


表情も優しくなったし、これで良いかな。さっさと追いかけないと。


秋見先輩は後を追って飛び出して行ったのだから、香取さんを探せば良いはず。


香取さんがどこに向かったか。それは定かではないけれど、家に帰るならば今頃は昇降口に差し掛かった頃だろう。それに何となく何処に居そうか見当はついている。


そうして私たちは一直線に校舎の外、体育館へと向かった。









──予想通りだ。


最短経路で体育館前に着くと、香取さんは出入口の石階段に座ってバレーボール部の活動を眺めていた。先輩達はまだ来ていない。


心を読んだ時に、ここでバレーボール部を観るのが習慣になっているのは知ってたから、思った通りだった。


学校の構造上、体育館に行くためには一度昇降口を通って学校の外に出なければならない。そして、一年の昇降口から体育館は少し離れている。秋見先輩達はまだ校舎内の何処かで香取さんを探しているのだろう。


「香取さん、こんなところで何してるの?」

「何となく懐かしいなと思ってぇ。ここに居れば見たかった何かが見えるような気がするんですぅ」

「隣、座って良い?」

「はい、どうぞぉ」


バレーボール部を見学する香取さんは、終始何かを探しているようだった。



数分経ってからようやく先輩達がやって来て、茶話部員が全員揃う。走っていたのか秋見先輩は息もえだ。


「はあ、はあ、めちゃ探したよー」

「そんなに息切らして大丈夫ですかぁ。茶話部ってランニングもするんです?」

「はあ、結姫ちゃん早く記憶を戻してあげてー」


私も記憶が消えた時は少し怖かったけれど、別に対応が間違っていたとは思わない。香取さんの一番の被害者は秋見先輩なのに、どうして記憶を戻せなんて言うのだろうか。


「本当に戻すのですか?また舛谷先輩に粘着し始めますよ」

「うん、戻して。あんなことされたら香取さんが面白くないでしょー。私も珀君のことを考える度に、香取さんのこと思い出すし。ちょっとトラウマになりそうなんだよね……」


香取さんは記憶が消えた以後、じゃが全くなく状態異常が綺麗さっぱり無くなって、スッキリした表情をしている。実際、記憶を戻さない方が良いと私は思う。


その時、香取さんが舛谷先輩に気付いて言う。


「あ!私の探してた人ですぅ!」


──え?記憶、消えてるのだよね?


太陽君に目線をやると、近くに来てこっそり教えてくれる。


「何をどこまで消すかは彼女次第だから、完全には記憶を消さなかったんだと思う。だから面影とかは何となく覚えているのかも」

「なるほどね。好意は封印されていると思うのだけど、記憶を戻す方法って分かる?」

「それも香取さん次第かな。何か条件を指定しているはずだよ。本人が条件を忘れていても、結姫の観測分体で深層心理を読めば分かるはず」


そういう仕組みになっているのね。

結局、私の一存だけでは記憶は戻せなくて、戻す戻さないは香取さん次第ということか。


香取さんが記憶の封印を解くつもりが全く無くて、記憶の封印を解く方法さえ忘れてしまっている可能性もある。その場合、私の観測分体で封印された記憶を覗くことが出来なければ、一生記憶は戻らないのかも。


逆に、もう封印を解いたってこともあるのかな。香取さんの心を読んでみよう。


『記憶の封印を解いたの?』

『封印?何のことですかぁ?』


『封印の解き方は?』

『意味が分からないですぅ』


間違いない。香取さんは、舛谷先輩に迷惑をかけないように記憶の封印を解く方法まで忘れている。


それなのに、まだ舛谷先輩のことが気になってしまうのか。


「あの、名前教えてくれますかぁ?」

「俺は……舛谷珀だ」


先輩がそう名乗ると、うんうんと納得した様子で言う。


「あのぉ……舛谷先輩?多分、私ぃ、先輩のこと好きみたいですぅ。一目惚れかもしれません笑」


その場の空気が氷つき、背筋に寒気が走る。


――記憶を消したのに、また好きになった。


「いやぁ、一目惚れって初めてでぇ。こういう感覚なんですね!少しお話しませんかぁ?」

「あ、ああ、今度な」

「これって、どういうことー!?」


思わず秋見先輩が声を上げたので、すかさず状況を説明してあげる。


「確かに先ほど部室で記憶は消していて、舛谷先輩に対する好意は無くなりました。ですが、恐らく、記憶を消しても香取さんの男の子の趣味嗜好が変わる訳では無いので、また好きになったのだと思います」

「よくそんなこと淡々と言えるよねー。記憶を消した時とは別の意味で怖いよ。結姫ちゃんは怖くないの?」

「普通に怖いですよ。ほら、まだ鳥肌立ってますし」


私が鳥肌の腕を見せつけると、「だよねー」と言いながら両手でスリスリしてくる。不安で力が入るのは分かるけれど、皮膚が発火しそうなのでやめて欲しい。


秋見先輩は香取さんの記憶を元に戻したいと言うけれど、私は戻したくない。そもそも、香取さんに許可を貰ってやったことで、秋見先輩に記憶を戻す権限は無いと思う。


「また舛谷先輩を好きになってしまった今の状態で、香取さんの記憶を戻す方が怖くありませんか?今の好きな気持ちと、戻す前の好きな気持ちが重なって、壊れてしまうかもしれないです」


最後のは適当に言ったけれど、実際戻した時にどうなるかは分からないし、出来ればこのままにしておきたい。もう壊れていると言えば、壊れているのかも知れないけれど。


秋見先輩が悩んで頭を抱えているのもつゆ知らず、香取さんが妄想を膨らませる。


「私ぃ、遊園地デートしてみたいんですよぉ。舛谷先輩と一緒なら、待ち時間さえ楽しそうだなって。絶叫系が好きなのでぇ、グルグル一回転するジェットコースターに何回乗れるか挑戦しましょう!って冗談ですよぉ笑。……あれ?あぁ!帰りにお揃いのお土産を買って、通学カバンに付けるのも良いですねぇ。……うん?……ん?私、誰のこと話してたんでしたっけ?」


――また、記憶が封印された?


自動で観測分体が働いたのか、香取さんの理性が動かしたのかは分からない。とにかく、また舛谷先輩の記憶を再度忘れたようだった。


香取さんの暴走はまだ終わらない。記憶を封印した一分後には、その両目はまた舛谷先輩に釘付けになっている。


「先輩ですか?めっちゃくちゃ好きですぅ。名前教えてくださぁい!」

「香取さん、一旦待とうね」


《《一目惚れループ》》に入っているような気がしたから、私は香取さんと舛谷先輩の間に割って入る。


好きになるのと記憶を消すことのタイムスパンがあまりにも短い。絶対に精神的な負担がかかっているはず。怖い怖い。


「太陽は舛谷先輩を連れてどっかに行ってて、女子三人で話をするから」

「待ってぇ!名前教えて下さいよぅ」

「私が代わりに教えてあげますから。さあ、早く遠くへ行って」


太陽と舛谷先輩は小走りで校舎の中へ入っていく。兎にも角にも、二人の距離を遠ざけることが出来た。



秋見先輩と、香取さんと私だけになる。


『あなたの好きな人は?』

『好きな人なんて居たことないですぅ』


太陽君達が視界から見えなくなったばかりなのに、香取さんはもう好きになったことを忘れている。私はまだ舛谷先輩の名前すら教えていないのに……。


「結姫ちゃん。やっぱり香取さんの記憶は戻さないで良いよ……。でも珀君を見るたびに好きになっちゃうから、そうならないようにはして欲しいかなー」

「……考えておきます。とりあえず、舛谷先輩とは会わないようにした方がいいですね」

「絶対に会わせないでー。彼氏だからとか以前に、香取さんのことが心配過ぎるから」


その日の部活はそのまま解散して、二人が会ってしまわないように細心の注意を払って下校した。







家に帰ると、私宛の封筒が一通届いていた。

広告のハガキならまだしも簡易書留なんて、かなり珍しい。高校の合格通知書ぶりかな。


今まで合格通知以外の簡易書留が届いた記憶は無いし、多分良いお知らせだろう。


いや、もしかして学校からの良くないお知らせも書面で来たりするのかな。部活作ってからは色々とあったし、怒られる心当たりは……全然別に無いけれど。


封を開けて送り元を確認する。


そこには、《UOON E01支部 育成管理課》と記載されていた。

結局、香取さんの問題は半分未解決の状態です。そんな中、突然送られてきたUOONからのお手紙、、、

(香取さんは数話後にまた出て来ます。)


〈諦められない恋心〉はここまで。次話からの〈運命の行方ゆくえ〉で一部は遂に完結します。

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