第74話 去る者は追わず
去る者は追わず。それが自衛隊の基本姿勢である。しかも、追わないどころか退官後の就職探しまで面倒を見てくれる。任官中に業務に必要な資格取得も完全にバックアップしてくれる。とにかく、自衛隊を踏み台として考えている者には、これ以上無い環境を自衛隊は用意してくれている。百奈の上官である護衛艦とさ艦長の井野矢崇一等海佐も副官の小川口敬三等海佐もその姿勢だった。身の上話が出来る様な上官ではあったが、彼等の様な幹部自衛官にとっては任期制自衛官と言う者は、2〜3年間で任期が来たら入れ替わるものであると言う認識がある為、別にハッキリ言って気にしてはいないのである。それでも有能な隊員がいれば任期継続や三曹への昇任の話を持って来る。こうした部分は民間会社とは少し違う事なのかも知れない。民間会社は定期的に人員が入れ替わる事はない。もちろん定年や中途退職、入社、転入と言うものはあるが、自衛官の様に時期が決まっているものでは無い。軍隊ならではのこの雇用システムは効率的だから使用されているが、少子化の続く日本でいつまでもこの雇用システムが続くとは思えない。




