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第6話 泳げなくても大丈夫
入隊者の中には泳げない人間もいる。しかし、ここが自衛隊の凄い所で、カナヅチだった人間がたった一、二ヶ月で100メートル、200メートルを普通に泳げる様になる。面接の時に泳げるか問われ、泳げないと答えても合格出来るのは、カナヅチを教育する絶対の自信が自衛隊にはあるからだ。そこそこ泳げた早瀬も更にパワーアップして長距離を泳げる様になっていた。プールで泳げなければ、艦乗りになった時にいざと言う時に溺れ死んでしまう。泳げる様になる事は万が一に備えると共に海上自衛官として体力を錬成する事に繋がる。自分を生かせるのは自分しかいない。誰かが助けてくれると言う甘えを捨てさせ、諦めたらそこに待っているのは絶対の死である。手を差し伸べる人はいない。自衛隊と言う自己完結性を最重要視する部隊において、手を差し伸べる人はおらず、生きるか死ぬかは全て自分次第なのである。百歩譲って助けてくれる人がいたとしても、その時点で誰かに迷惑をかけているのである。一端の海上自衛官ならばカナヅチを克服してからが本物である。