第56話 初めての部下
早瀬が海上自衛隊に入隊してから1年が経とうとしていた。自衛官にとって3月・4月と言えば、隊員の入れ替わりの時期である。定年を迎えたベテラン士官や下士官や任期を更新しなかった任期制自衛官。等が退役(今はそうは言わず退職と言う。)し、新入隊員が入隊してくる。入って来るものが、必ずしも自分の部下になるとは限らない。早瀬の場合部下と呼べる対象は任期制自衛官だけである。初めての部下はどこか頼りないが、1年前の自分もそうであったのかも知れないと思うと、恥ずかしかった。教育隊でみっちり3ヶ月教育を受けて護衛艦とさに配属されるまでは、部下の顔すら分からないのであるが。自衛官の退職について補足しておくと、退職年齢は階級により異なる。統合幕僚長、陸上幕僚長たる陸将、海上幕僚長たる海将、航空幕僚長たる空将は62歳。将官(将、将補)が60歳、一佐から三曹は53歳から56歳となっている。これは若年定年制と呼ばれているのだが、民間の定年である60歳よりはかなり早い。将補以上の階級には大多数の自衛官は成れない為、53〜56歳で定年する人が圧倒的多数である。最近は人手不足による定年年齢の引き上げも実行されている様だ。




