第16話 捧げ銃(かかげつつ)
早瀬には嫌な訓練があった。「捧げ銃-(かかげつつ)」である。10㎏近い重さのある64式小銃を掌だけで支えると言うもので、力のない女性海上自衛官には相当ハードなものであるのに違いはない。式典や各種行事で一時間や二時間もこの姿勢をとっていなければならないのは鍛えていない者には無理だろう。基本的に自衛隊では男女差別は無いと言う体になってはいるが、やはり体力的な部分で女性は男性には敵わない。当然つける配置は限られる。ただ可能ならばその範囲においてはその限りにはない。軍隊(自衛隊)ほど男向きな職場はないが、世間の流れには自衛隊とて抗う事は出来なかった。ひと昔前までは女性が兵隊になるなど有り得なかった。女性隊員が今や全自衛官の一割に登り、大日本帝国陸海軍の時代からは想像も出来ない事が現実となっている。最も欧米では日本よりも早く女性兵士の採用をしていて、日本も後を追ったのである。今時、女性自衛官が戦車の指揮や艦船で指揮を採る事は普通の事で、陸海空各自衛隊の全職種で女性自衛官にも制限をかけず、門戸を開いている。




