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第14話 IN
早瀬の教育課程も中盤を向かえてかなり特殊な環境に慣れつつあった。それでも毎日が驚きの連続である事に変わりは無かった。海上自衛隊では甲板作業中はズボンの裾をソックスの中に押し込む。これはいわゆるINすると言う事で、見た目は登山者顔負けである。ただ、これにもきちんと意味はあり、見た目を気にしていられない理由はある。突起物の多い甲板上では裾を引っかけてスッ転ばない様にする為と言うのが、それにあたる。基本的に艦艇は、海上で活動を行う。見た目を気にしていては命に関わる事故が起きないとも限らない。波の大きな時等でも甲板作業と言うものが必要な時もあるかもしれない。見た目はお世辞にもかっこ良いとは言え無いけれども、そう言う風にする意味はきちんとあるのである。そのルールを守らずにいて困るのは、その人自身であると言う事だ。自衛隊と言う特殊な環境においても、そうでなくとも、郷に入れば郷に従えと言う常識は同じであるのであるが。




