表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

#1 エリセント

エリート街道まっしぐらな男、エリセント。

彼の地位は貴族。しかも、あの大貴族バーモンドの血を継いだ、バーモンド系列の純血主義派の家、パーミック家の跡取り。

つまるところ、彼は完璧だった。

何をしてもうまくいく。

魔法だって、スポーツだって、剣術だって、騎馬だってーーー。

彼にできないことなどなかった。

ただ一つを除いて。


「…ここどこだ?」


道、である。彼は道、すなわち方向感覚が皆無であった。来た道を覚えることもままならず、結果的に迷ってしまう。

呪いか何かだと疑われ、はるばる遠方から魔術医に来てもらい、精密な検査をしたが異常はなかった。

脳に問題があるのかというと、そういうわけでもなく、国の最高の医者に言っても至って健康だと言われる。


最高な男の、最大の弱点。それは、方向音痴なことだった。


そんな彼は、なぜか冒険者になりたいと思ってしまった。


そのために今彼は、一人で冒険者ギルドに足を運ぼうとしているのだ。

だが、案の定。


「ったく、どうしたもんかねぇ。これさえなければなぁ…」 


頭の後ろの方を掻きながら呟く。


彼には苦い思い出があった。当然、道、に関する話題だ。

彼には好きな人がいた。だが、彼が方向音痴を極めすぎているが故に、エスコートなどできるはずがなく、半ば二人とも行方不明になりかけた。

幸い二人に何事もなく済んだが、これにより、相手方が貴族であったことも所以して、貴族界にエリセントの方向音痴ぶりが露呈してしまった。


それによって、パーミック家の威信はダダ下がり。すぐさま家に入れられ、今まで自由にされていたエリセントは軟禁されることになってしまった。


そこからここまで十日間の期間が過ぎていた。彼は軟禁場所から魔術を用いて脱走してきていた。


「見つかる前に冒険者登録しないとだな…」


だが、方向音痴のため道がわからない。

そのために、何をすべきか。


(道案内をしてもらうしかないな…。しかし、こんな格好のやつを道案内してくれる優しい人は果たしているだろうか?)


彼の今の服装はこうだ。

ブルーの縦線がみっちりと整然と並べられたデザインのパジャマを着ていた。

この格好でなぜ冒険者になれると思うだろうか?

ぱっと見、明日の食い物も見繕えない浮浪者の格好にしか見えないだろう。

だが、モノは試し。


「あの、冒険者ギルドの道を教えていただけませんか…?」


彼が声をかけたのは、よりにもよって獣人だった。

彼は外界に出たことがあまりないことに加え、庶民の社会常識というものをなんら心得ていなかった。


彼は殴られてしまった。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ