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オッサン、転生して神討伐  作者: ぶんち
第2話:大翼竜とヨゾラ
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強化士の目覚め

 なんだよアレ……恐竜じゃん。

 翼竜(ディフォ)は、プテラノドンに近い外見だった。というか酷似しているような気もする。


 まさか、恐竜のことを獣と呼んでいるのか?

 群れで襲われたら、テオ君が言っていたように県が壊滅する可能性もあるか?

 県という単位でどうにもできないような相手なんだろうか。


(……(ビスト)には強化士と同じで等級(ランク)がありますー。翼竜は最低の3級でして、とても臆病で慎重な獣だと聞いていますー。そのわりには、堂々と姿を現してますねー)


 20頭近い数だった。

 ほとんどの個体が、車両内から引っ張り出した遺体や重傷の生存者を興奮した様子で(ついば)んでいた。

 

「キィエェ……ウゥォーアッ……アァッ」


 虚空を見つめる少女の頭部を嘴に刺し、勝ち(どき)のような声をあげる、翼竜。


 人を食べてやがる……

 大ファンだった、ジュ○シックパークシリーズを連想せざるを得なかった。

 だとしても、臆病だという翼竜が人を堂々と襲っているのは、よほど腹が減っているのだろうか。


(竜さん。あの数ですし、ここから逃げ出したほうがいいと思いますー。僕ひとりではどうにもできないですよー)


 テオ君の言うとおりだとは思った。

 体を借りているような状況とはいえ、俺は強化士としての戦い方を知らない。

 元の体の持ち主が手に負えないと言っているのであれば、確かに何もできないと思う。


 けど、それでいいのだろうか。

 ハミンの父親しかり、まだ生きている人もいる。

 臆病だというなら、何匹かだけでもビビらせたら、群れが逃げていくんじゃないか。


(確かに数匹くらいならどうにかできると思いますけど、かなり興奮しているようですしー、一斉に襲われたら殺されますよーその体は僕のなんですから、危ないことに首を突っ込まないでくださいー!)


 語気を強めるテオ君の言うこともわかる。

 ただの人生に疲れたオッサンだった俺が、動ける他人の体に入ったからといって、ヒーローぶるのはおかしい。


 けど……俺は漫画や震災のニュースで、命がけで他人を救う人たちを見て胸を熱くしていた。


 俺にはできないけど、本当にすごいなこの人たちは――

 しょっちゅう、感動して泣いていたかもしれない。

 そのあと、情けない自分を思って落ち込んでもいた。


「ハミン、ハミンーーッ!!」


 少女の父親の悲嘆に満ちた絶叫が聞こえる。

 息を引きとったのかもしれない……


 このまま、何もしないで。

 あの父親に、生きがいといっていた娘の遺体を獣が啄む姿を見せる――

 10歳の蒸し暑い夏、家族全員が巻き込まれたトンネル崩落事故。

 助手席で亡くなっている母さんに覆い被さっていた、血みどろの父さんがフラッシュバックする。


 ――イヤだ。


 ごめん、テオ君!

 何を付与したらいいか、教えてくれ!


(え? は? いや、逃げてくださいと――)


「お前ら、やめろ!」


 叫んで駆け出し、薙刀を握る手に力を込めた。

 翼竜たちは驚き、全羽が空へと舞い上がる。


(……あなた何なんですかー! あー! 脚力……いえ、剛性と靭性を付与してくださいー!)


 わかった! 脚力、剛性、靭性!

 そう念じると、刹那で消える琥珀色の輝きが3()()体を覆った。


(え3つ……)


 明らかに動揺したテオ君の声が頭に響いたが、それどころじゃなかった。

 自分の加速についていけなかった俺は派手に転んでしまうが、すぐに立ち上がり、男性の眼球を咥えた翼竜の真下に滑り込み。

 跳び、5メートルくらいの高さにいた翼竜の骨ばった足を掴んで地面に引きずり下ろす。

 地面で小さくバウンドし呻いたが、翼竜は怯まずに鋭いクチバシを俺の頭へ向けて突き出してくる。

 その動きが遅かった。

 漫画でいう、ゾーンに入ったときのように。

 難なくかわし、バックステップ、踏み込み、薙刀で翼竜の首を一閃。

 深緑色の血を噴き出しながら、翼竜が倒れる。


 体が動いた。というか動く。

 漫画やアニメで見続けてきた、俺もできたらいいな、と漠然と思っていたような動きが、自然と頭に浮かぶ。

 そしてその動きを実現できてしまう。


 視界の上端に、上空から急降下する翼竜。

 薙刀を振ってそれを遮り、着地した翼竜の側頭部に空中で体を半回転しての蹴りを叩き込んだ。

 両手での着地、脳漿を撒き散らして崩れ落ちる翼竜。

 返す刃で薙刀をひらめかせ、左後方から襲いかかる翼竜の胴体を下から斜めに斬り上げる。

 致命傷にはならず、翼を叩きつけられたが、多少痛いだけだ。小学校のころにハマっていたゲームで愛用していたサマーソルトキックで翼竜の顎を砕く。


 仲間を数匹殺された残りの翼竜たちは、ギャアギャアと喚きながら、円を描くように宙を旋回し始めていた。 

 数に任せての包囲が来るかもしれない。

 剣道のように薙刀を両手で前に構え、深呼吸して息を整える。


(なんなんですか、その動き……いやそれよりも、竜さん……3つ強化を付与してますよ……)


 テオ君、いまそれどころじゃ……

 ――え、3つ?

お読みいただき、ありがとうございます。

評価ポイントなどにはこだわりませんが(もちろんあれば喜びますが)、何よりも、できたら感想をもらえたら嬉しいな、なんて最近思っています!

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