貴方からの言葉
7章 貴方からの言葉
眩しい。カーテンの隙間から差す日が私を照らす。私を照らす日が生暖かく、肌寒い部屋で何をせずただ茫然としている私を元気づけているかのよう。そんなのもただの思い込みだ。生きているのに生きている心地がしない。貴方が居なくなってからだ。貴方が居なくなって何日経ったんだろう。とっさにスマホを手に取った。通知を確認すると、ある人から2通。内容は渡したいものをポストに投函したという内容のものと、葵ちゃんへ渡した方が音が喜ぶから。という内容だった。音...音くんのお母さんか。私はお葬式にはいかなかった。死んだと思いたくなかったから。だから届けてくれたのだろう。私は少しため息をついて一階に降り玄関へ向かう。ドアを開けポストを見る。大きな茶色い封筒が一つ。これか。私は封筒を抱きかかえて部屋へ帰る。封筒を開けると青い少し黄ばんだノートが一冊。恐る恐るページをめくると数ページだけ字や絵がかいてある。音くんの字...私は音くんの字をなぞりながら読んでいく。
『僕はもう死んでしまうらしい。このことは君に隠さなきゃ。君を泣かせないためにも。無理に声を出させないために。君が苦しい思いをしてきたのを知れたから。僕はもう君が苦しまない生き方が出来るようにしてあげたい。』
またページをめくる。
『君が笑顔でいる日が増えた。僕の心残りはないかな。君にはいつか僕を忘れてまた新しい好きな人を作って、幸せになって欲しい。でも、僕の君に対する好きは続いているよ。死んでも続く。だからほんとのこと言うと忘れてほしくないかな。(笑)』
またページをめくる。その眼には潤いが出来ていた。手は震えている。そこに描かれていたのは字じゃなく絵だった。淡い紫色の花。貴方は本当に花が好きだなぁ。(泣)そう呟きながら、スマホのカメラで花の名前を調べる。『シオラ』という花だ。花言葉...『あなたを忘れません。』貴方らしい。私だって忘れてやるもんか。嗚咽が混じる声に自分も驚いている。私は音くんからの言葉で決まった。私の考えが気持ちが定まった。貴方が生きたことを私は紡いでいかなければならない。私が貴方にできる恩返しはこれしかない。私は貴方からたくさんのものをもらった。なのに私は貴方に何もしてあげられなかった。貴方に好きという言葉さえ伝えられなかった。私は本当に何もできなかった。後悔しかない。ごめんね。音くん。私音くんが言った通り幸せになるから。人生を変えてくれた貴方のことを思い出にしたくはないけれど、時間がたてば思い出になってしまう。今の私はそれを恐れている。貴方と笑った日々を語らった日々を思い出なんかにしたくない。でも思私は思い出になってしまうのを受け入れて生きていく。そうしないと貴方が悲しむから。空から怒られるのも嫌だからね。見ててね。音くん。