日記
4章 日記
4月6日(月) 晴れ
桜が満開な正門で貴方と出会った。教室が分からない私に貴方は優しく声をかけた。耳の聞こえない私に嫌な顔一つせず、接してくれた。手話がとても上手な貴方。私は貴方の手話に一目ぼれをした。私はすぐさま貴方に手話を教えて欲しい。と声をかけた。会う口実を作った。
4月10日(金) 曇り
貴方が毎日眺める窓の外は貴方にとってどんな世界なんだろう。私は貴方に聞きたいことが増えた。貴方の世界はどんな音がするんだろう。いつか聞きたい。貴方をもっと知りたい。そう思うのは私だけだろうか。貴方も同じ気持ちならいいのに。
5月3日(月) 晴れ
休み時間音くん顔色悪いなって思ってたら、音くんが倒れた。心配で一緒に救急車に乗って病院までついていった。途中で音くんのお母さんが来て話した。音くん“無彩病”っていう病気であと一年もないみたい。そんなこと知らなかった。でもあの時の質問内容に納得がいった。「君の眼はどんな色をしているの?」の言葉にはそんな意味が込められていたんだ。私が今この日記を書いているときも音くんは目を覚まさない。不安で仕方がない。音くんの意識は戻るのだろうか。目を覚まして起きて。音くん...久しぶりに声を出した。自分じゃ聞こえないけど、喉がガラガラだから声を出したことがすぐ分かった。音くん起きて。
追記:私決めた。音くんにちゃんと好きと伝える。音くんが居なくなるまで私は音くんが笑顔でいられるようにしたい。
5月4日(火) 晴れ
音くんは目を覚ました。今日は検査だったみたい。私は学校を初めてさぼった。音くんが心配で仕方がなかった。音くんの顔が少しやつれていた。音くん検査結果聞きに行った後から、少し顔が暗い。どうしたんだろう。心配。私は何もやってあげられない。何が出来るのかな。私でも出来ることって何だろう。
音くんの口から寿命が短いごとが聞けた。少し嬉しかった。私も耳が途中で聞こえなくなったこと。その理由が、いじめだったこと。素直に伝えた。音くんは、泣きそうな顔をして頷いていた。優しいな音くんは。
6月18日(金) 曇り
音くんは今日も暗い顔をしていた。音くんをまた笑顔にさせたくて声を出した。音くんに告白した。音くんも私のことが好きだって言った。両思いだ。なんか嬉しい。お互いがお互いを幸せにする。私は本当に恵まれているのかもしれない。私は愛する人の笑顔を守り、愛する人からも笑顔を守られる。こんな人生でそうそうないと思った。
8月2日(月) 晴れ、ムシムシしていて熱い
今日は終業式で午前は普通に授業があった。三限目の国語の時間。みんなが一斉に後ろを見ていた。何があったのか気になったけど、板書が遅れていたから先に板書を終わらせた。終わってから振り返ると音くんがが居ないことに気づいた。周りの人に聞いたら早退したみたい。どうしたんだろう。授業後音くんに連絡したけど、返事は来なかった。
追記:その後、音くんに会えたのは死の三日前だった...