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色と音色  作者: 花車
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名前

白黒の世界で君の瞳の色に一目ぼれしたー。



音のない世界で貴方の優しい声に一目ぼれしたー・

音のない君と、色のない僕の期限付きの恋の話。


1章 名前

ある春の日僕は目を覚ます。甘い匂いが漂うこの部屋。灰色の部屋。飽き飽きするくらい見たこの部屋は、いつから灰色に染まったのだろうか。「学校の準備出来たの~?」と下から母の声がする。僕はその声に返事をせず、白いワイシャツに腕を通した。白いワイシャツ、黒のジャケット、灰色のズボン。どれも実際何色だろうか。そんな疑問を持ちながらリビングへと向かう。「おはよう。学校...行ってくるね。」そう母に伝えると母は嬉しそうに頷いた。あんなに嬉しそうな顔をする母を見たのは、いつぶりだろうか。色々なことを考えながら靴を履く。「靴まで黒色か。」そうつぶやいて僕は家を出た。学校は案外近くて、公立の高校に進学した。今日から高校生活か。少し気分が上がっているとき、目の前でキョロキョロしている子を見つける。新入生か?何を探しているのだろう。その考えよりも体が先に動いていた。「大丈夫?誰か何か探してる?」そう後ろから声をかけても返事をしない。ナンパだと思って無視しているのか?そう思って肩をたたく。驚いてその子は振り向いた。僕は言う。「大丈夫?」そう言うと彼女は横髪を耳に掛ける。音楽を聴いているのか?一瞬そう思ったけれども、そんな考えなんてすぐに消えた。補聴器か。そう分かったとき彼女は慌てた素振りを見せた。鞄を前へずらし、何かを取り出す。スマホだ。彼女はスマホで何かを打ち始めた。コツコツとなる音が何故か心地い。不意に彼女がスマホの画面を僕に押し付けた。『耳が聞こえません。』僕は慌てて手に持っていた鞄を下ろし、地面に置いて、手を自由にし、話を始めた。「...(手話分かる?)」そう手話をして聞いた。彼女は驚いたように頷いた。僕は続けて「...(僕は怪しい者ではないよ。僕の名前は茜 音。君の名前は?)」そう聞くと彼女の眼は少し優しい目つきへと変わり、彼女も手話を始めた。「...(私の名前は茜 葵。」そう名を教えてくれた。彼女は続けて「...(手話上手だね。私、今更覚え始めてて...教えてくれないかな?)」それが僕と君が交わした初めての会話だった。

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