すみっこの椅子
よく行く居酒屋には、誰も座っていない椅子が店の隅っこに1つ置かれている。
ガヤガヤとにぎやかで椅子が足りないときでも、その椅子が使われることはない。
そして月のある日には、その椅子の上に花が1輪、花瓶に入れられて供えられていた。
だれのものなのか、ということを店員に聞くことはない。
その状況を見て、スッと誰もが手を降ろし、アレは使ってはいけないものなのだと本能レベルで察する。
誰が供えているのかといえば、やはり店員なのだろう。
だからそれが誰の椅子なのかは、今も知らないし、きっとこれからも知らない。




