大正恋物語
大正時代にも夢見るって大切だったと思う物語です。
第1章 急な嫁入り
1、アグリと申します
私のお嫁入りについてお話しします。
望月アグリと申します。旧姓は河野です。
そうですね、河野の時の話をまずは始めましょう。
私は5歳の時に、父を亡くしておりまして、上の姉は私が女学校時代にはすでにお嫁入りしておりました。三女でしたが、長女として私が家を取り仕切っておりました。父が弁護士をしていたので少なからず家にはお金が残っておりました。
ある日、母が父の古い友人から騙されてしまって一文無しに近い状態に河野家はおちいったのです。
あらまあ、どうしたことでしょう。このままでは、弟の中学の費用も私の女学校の費用も払えません。いえ、生活費でさえも。
1ヶ月くらい母は色々と方々出かけておりました。
不安しか不安しかない、それでした。
私は、いつも帰り道ですれ違う群馬一中の男性に淡い恋心を抱いていました。
ある時、こっそりついて行ったら「望月組」という家に入っていきました。
ああ、このお家にお嫁に来れたらいいのに、と思っておりました。
母がある日ニコニコした顔で私に話しかけてきました。
「アグリ、居間にきて欲しいの。お話が。」
「はい、お母様」
「あのね、あなた、お嫁に行って欲しいの。」
「女学校をでたらですか?」
「いえ、来月。」
「では女学校はお終いですか?」
「それが、相手のお家はそこから女学校に通っていいとおっしゃるの」
「いいんですか?」
本当は、彼の方と結婚したいから、拒否したかったんです。
でも、話は続きます。
「でね、相手のお家は群馬でも有数の大きなお家、望月さんていうの。」
「え!お母様!本当ですか?」
「お知り合い?」
「ああ、いえ、おうわさくらい。」
「こんな条件ないから、ごめんなさい、お嫁にどうかしら?」
「どんな条件なんですか?」
「あなたの女学校の費用とマスオの中学の費用、河野の家の費用も」
ああ、こうなったら、好条件すぎます。
「お母様、ぜひ!」
そうやって、私はお嫁入りを決めたワケです。
しかし、そのお相手が一癖あるとはその時はまだ知らない私でした。
いつの時代も忘れない何かを見つけられたらいいです。