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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

SS 「砲火の中の兵士」

プロローグ


俺は第二次世界大戦中、ナチスドイツの兵士として前線に立った。若かりし頃、祖国のために命を賭けるという意気込みで入隊したが、その過程で多くの過酷な試練に直面することになった。


兵士としての任務は敵を倒すことだけではなかった。自分たちの生き残りもまた重要な任務だった。飢え、寒さ、睡眠不足、疲労に苛まれながら、戦いを繰り広げた。生死をかけた戦いは、時には仲間との別れをもたらした。


戦争の現場で目にした光景は、人々が想像する以上に惨たらしく、痛ましかった。しかし、それでも自分たちの正義を信じ、祖国を守るために戦い続けた。





兵役に就く前は、俺はまだ若くて無邪気な高校生だった。ドイツとソ連では、戦争が続いていたものの、それがどのようなものかはよく知らず、ただ国家が勝利することを望んでいた。


そんな中、俺は17歳の時に兵役に志願し、徴兵された。当時は、男たちは自分たちの責任で兵役を受けることが求められ、自分自身を試すために、俺も兵役を志願した。


家族は志願に反対したが、俺は当時のナチスのプロパガンダに騙され、ドイツを守るために戦うことが使命だと思っていた。兵役に就く前、俺は母親に涙ながらに見送られ、父親は重い口調で、「戦争は人を殺すことしか生み出さない。戦争は何も解決しない。」と俺に語りかけたが、俺はそれを受け止めることができなかった。


入隊する前は、自分の能力に自信を持っていた。体育が得意だったし、学業も優秀であった。

しかし、兵隊になってからは、予想外に厳しい訓練に直面した。多くの仲間たちが、訓練中に倒れる中、自分自身も何度も限界を超えることが求められた。兵役に就く前は、自分の能力を過信していたと反省した。


それでも、俺は「国のため」にと、自分自身に言い聞かせ、訓練に励んだ。徐々に、周りの兵士たちとの絆も生まれ、共に戦う仲間たちとの絆は、戦場での力となるだろう。訓練が進むにつれて、戦争が現実となって迫っていることを実感するようになった。

戦争が目前に迫り、俺は自分自身に問いかけるようになった。「なぜ戦わなければならないのか」「人々はなぜ殺しあうのか」俺には、これらの問いに対する答えはなかった。ただ、命令に従って戦うしかないと思っていた。




そして、ついに俺は前線に向かうことになった。

俺は前線に向かうための列車に乗り込んだ。同じ車両には他の新兵も乗り込んでいた。みんな静かに、そして緊張していた。


俺も同じように緊張していた。前線は想像以上に過酷な場所だと聞いていたからだ。でも、俺には家族がいる。家族のため、そしてドイツのために戦わなければならない。


列車がゆっくりと進み始め、俺たちは前線に向かっていた。道中、新兵たちは様々な話をしていた。それは、不安を和らげるためのものだったのだろう。


前線に着くと、緊張感と不安感が増していくばかりだった。敵と対峙する前に、ある程度の時間を取って休息することができたが、それでも不安な気持ちは拭えなかった。

そのとき、同じ部隊の上官が俺に話しかけてきた。「お前たちは、敵と戦わなければならない。でも、それ以上に大事なことがある。お前たちは、同胞たちを守るために戦うのだ。仲間を守り、仲間に守られながら戦い続けるんだ。それが、俺たちドイツ兵の誇りなんだ。」


上官の言葉に、俺は救われたような気がした。自分が何のために戦っているのかという答えを、自分なりに再確認できた。

その後部隊の仲間と合流し、仲間たちと共に戦いを繰り広げることになった。


最初は敵と遭遇することはなかった。でも、俺たちが配属されたのはスターリングラードだ、いつ敵と遭遇するかわからない緊張感が押し寄せた。

数日は、俺たちは苦労し、疲れ果てた。でも、徐々に俺たちは適応し、前線での生活に慣れていった。





ある日、俺たちは敵の攻撃に遭遇した。俺たちは慎重に敵を追い詰め、やがて白兵戦になった。

敵との激しい戦闘の中、俺たちは命がけで戦っていた。敵の銃声や叫び声が響き渡り、地獄のような光景が広がっていた。


俺たちは敵に対して無言で戦いを続けていたが、ある瞬間、敵の一人が俺たちに向かって叫んできた。


「なぜ戦うんだ!?」


敵の言葉に、俺たちは驚きを隠せなかった。しかし、その驚きも一瞬で、俺たちは敵を倒すために力を合わせた。


「故郷を守るためだ!」


俺が叫びかけると、仲間たちもそれぞれ答えた。


「我々は祖国のために戦っている!」


「敵の攻撃に立ち向かうことが義務だ!」


敵兵の問いかけに答え、俺たちは敵に立ち向かった。相手を倒し、激しい戦闘が終わった後、俺たちは疲れきって地面に腰をかけた。

しかし、敵兵が尋ねてきた言葉が頭から離れなかった。俺たちはなぜここにいるのか、故郷を守るために戦うことが本当に正しいのかと考え込んでいた。




その後、俺たちは敵との激しい戦闘から帰還した。傷ついた兵士たちが一列に並び、医療班の手当てを受けていた。


そのとき、同じ部隊の一人が、顔に傷を負っていた。彼は落ち着かない様子で、周りの兵士たちとも話をする気になれずにいた。


俺は彼のそばに寄って、「大丈夫か?」と声をかけた。


「ううん、俺はなんてことないけど、戦争って本当につらいな」と彼は呟いた。


俺は彼の言葉に共感し、話を聞くことにした。「何があったんだ?」と尋ねた。


彼はゆっくりと話し始めた。「実は、前線で出会ったソ連兵のことを思い出したんだ。あいつもただの兵士で、命令に従って戦っているだけなんだろう。でも、俺たちと同じ人間なんだよ。戦争がなければ、彼とも友達になれたかもしれない。そう思うと、胸が苦しくなるんだよ。」


彼の言葉に、俺も同じような気持ちがあった。戦争がなければ、敵味方なんてない。人間同士が殺し合うなんて、本当に馬鹿げている。


「そうだな、お前の気持ちは分かるよ。でも、戦争が終わったら、仲間たちと一緒に帰って、普通の生活を送ろう。そのためにも、今は前に進むしかない」と俺は言った。


彼は俺の言葉に少し落ち着いた様子で頷いた。俺たちは、敵と戦う現実を背負っていたが、仲間同士で支え合って生きていかなければならなかった。




ある日の吹雪の中、前線で戦う俺は仲間たちと休憩をとっていた。飢え、寒さ、睡眠不足が続く中で、誰もが疲れきっている中、体を寄せ合って寒さをしのいでいた。


仲間の一人が口を開いた。


「この戦い、いつまで続くんだろうな……。もう限界だよ、体がついていかないよ。」


他の仲間たちもうなずきながら、一人が言った。


「ここはスターリングラードだぞ。敵も必死だから、こちらも必死にならないと勝てっこない、

この地獄の戦争は終わるまで必死にならないと死ぬだけだ。」


俺はふと、この戦争がいつ終わるのかと考えた。しかし、その瞬間にもう一人の仲間が言った。


「終わるわけないだろう。こんなに巨大な戦争がいつ終わると思ってんだ?」


俺たちは絶望的な状況にいた。戦いがいつまでも続くように思えた。


その夜、俺は敵の銃声が響く中、寝床に入った。眠りにつくことはできず、過酷な現実に悩み苦しんだ。


俺たちは希望を持たなければならなかった。俺たちの生き残りをかけた戦いだったからだ。




………最後の仲間が倒れ、俺は一人になった。周りは敵兵の死体や破壊された建物で埋め尽くされていた。弾薬も食料も尽きかけ、もはや生き延びることすらままならない状況に追い込まれた。


俺は地面に座り、息を切らしながら周囲を見回した。そこで目にしたものは、悲惨な光景ばかりだった。戦争は人間を惨めなものに変えてしまうのだろうか。


「くそったれの戦争だ」と、俺は呟いた。


すると、背後から誰かの声が聞こえた。


「まったくだ、お前に同感だ。」


俺は振り返って、声の主を見た。それは、俺たちの中で最も若かった兵士の一人だった。彼は、体中に傷を負っていたが、まだ戦う気力を失っていなかった。


「お前も生き残ったんだな。よくやった」と、俺は彼に声をかけた。


「まだ、あきらめるわけにはいかない。みんなのためにも、俺たちは戦わなければならないんだ」と、彼は答えた。


俺は、若い彼の言葉に励まされ、最後の力を振り絞って戦い続けた。でも、それでも敵の攻撃は止まらず、俺たちの前には絶望的な未来しか見えてこなかった。


「くそったれが、ここで死ぬわけにはいかねえんだ。逃げるんだ!」と、俺は叫んだ。


彼は驚いたように俺を見たが、すぐに理解したようだった。俺たちは最後の力を振り絞り、背後の廃墟を越えて逃げた。敵に追われながらも、必死で逃げる中、彼は胴を打たれて地面に倒れこんだ。


「逃げろ! 俺は、もうダメだ…」と、彼は言った。


「だ、だめだ! 俺は、おまえと逃げるんだ!」と、俺は彼を引きずって逃げ続けた、敵が迫ってくる中、追い詰められ迎撃するしか無くなった俺は最後の手榴弾を投げた。爆発音が鳴り響き、煙が立ち込めた。

やがて、煙が晴れると、全員敵は倒れていた。運が良かった。俺は咳き込みながら立ち上がり、彼と逃げようとしたが俺が戻るとその体は既にピクリとも動かなくなっていた。

分かっていたことだった。引きずられながら止めどなく血を流していた彼は死にゆく運命だと、それでも見捨てられなかったのは執念だった。

動かなくなった最後の仲間の顔を見て、悲しみと絶望が心を覆い尽くした。仲間たちを全て失い、俺一人が生き残ったのだ。そして、俺はこの戦争で何を勝ち取ったのだろうか。何のために、こんなに多くの命が失われたのだろうか。


俺は悔いと後悔に満ちた気持ちで、遺体が転がる街を去っていった。




俺はスターリングラード市街から離れ、後方の地域へと移動した。そこでは、最前線で戦闘に参加していたことを証明するための賞状をもらった。しかし、俺はすでに疲弊し、その賞状に何の意味があるのか疑問に思った。


それでも、あの戦いで生き残ったことには感謝していた。

戦場での悲惨な光景や、仲間たちが次々と命を落とす姿は、忘れられないものとして俺の記憶に刻まれた。


その後、俺は再び前線に戻った。次の戦場でも、運命は変わらなかった。激しい戦闘が続く中で、再び仲間たちが次々と命を落としていく。だが、俺はなんとか生き残り、戦争が終わるまで戦い続けた。


戦争が終わった後、俺は故郷に戻った。だが、何もかもが変わってしまったように感じた。家族や友人たちとの再会も嬉しいはずなのに、何かが違う。戦争での体験が、俺の心を傷つけ、変えてしまったのだろう。


今でも、戦争での体験を思い出すと、胸が痛くなる。でも、それでも、忘れられない。あの戦いが、俺の人生にとって永遠に大きな影響を与えたことを。

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