89話 ランドルフ男爵の決意
ーふたりが知らない話ー
ふたりが退室した後、残ったランドルフ男爵夫妻とエチュード、ノクターン、マーチ
ふたりが居た先程まではその様な様子は微塵も見せなかったのだが、ランドルフ男爵はかなり思い詰めた表情をしている
話をしたいと言われ、勿論と答えたエチュード、その表情はにこやかな笑顔でランドルフ男爵夫妻はひとまず胸を撫で下ろした
その後、ランドルフ男爵の言葉を待つ一同
しかし、一向に次の言葉が男爵の口から出てこない
時間にして1分ほどの沈黙、男爵の緊張が空気に溶けて場の雰囲気を作り出す
男爵は決心しエチュードの笑顔に促され口を開く
「こ…」
男爵は今まで唇がこんなに重く感じたことはないだろう
「今回の留学と言う名目の人質確保のお話し、どうか我が娘を外していただけませんか?」
「それは…」
「もちろん、タダでとは言いません。人質には別の者を出しますし、要求される物は出来る限り用意いたします。」
「あの…」
「人質ですが、そちらの希望がなければ私自身が行かせていただきたく思っております。」
「あなたはダメよ。貴方は男爵でしょ?この家は貴方があってこそです。私が変わりになるのであれば是非」
「フルネーヤはダメだ!君を人質に出すなんてウァーラレイル子爵に合わせる顔がない!」
「でも…」
「この家の事は息子に継がせればいい。」
「あの!」
エチュードの声にようやく男爵夫妻は鎮まる
「訂正よろしいでしょうか?前提として私達は人質をとっているつもりはありません。」
「⁉︎いや、しかし」
「おふたりには自由意志で我が国に着いてきていただいております。
周りの方にはどの様に捉えられているか分かりませんが」
「それは本当ですか⁉︎」
「はい、私達の国は友好的な関係を築きたいと思っております。おふたりには人質ではなく本当に留学として来ていただきたいのでございます。
おふたりが望まれないのであれば、私達は無理におふたりをお連れすることはありません。」
「そ、そうですか…」
安心したのか、気が抜けたような声でランドルフ男爵は答えた
「それなら、フレイアに話してもよろしいですか?」
「もちろんです。ご家族でしっかり話し合ってくださいませ。ただし、強制することはおやめ下さい。」
「ありがとうございます。本当にありがとうございます。」
その後、5人は今後の話を詰めた
決まったのはランドルフ男爵夫妻はフレイアと話をして留学するか決めさせる
しかし、最終的に結論を出すのはフレイア本人で強制はしないこと
もしも、留学しないのであればフレイアとはここで別れる
留学するのであればこのまま予定通りに進めていく
そして、これは留学であり人質の確保ではない
ふたりを国に迎え入れるなら必ず不自由な思いはさせないこと
これをお互いに約束しあい、この場での対談は終了したのであった
ーーー
ランドルフ男爵が初めに口籠ったのには理由がある
この留学の話は王からの書状で知った
つまり、国の事実として確定した話なのだ
いくらエチュード達が構わないと言っても国の命令に逆らうことで反逆の罪を背負う
しかし、大事な娘を人質に出すことより彼は重たい唇を上げた時に自分の命を捧げる覚悟を決めたのであった
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、ブックマークや高評価、いいねなど頂ければ幸いです。
作者のモチベーションに直結しておりますので是非よろしくお願いします。




