10話 どうしても美味しく食べたい
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庭から部屋に戻ってきた玲
ササミを取り外そうとする悠
「おかえり、タネ上手く蒔けた?」
「なんか…育った」
「えっ?育ったの?この一瞬で?」
「うん、コレ」
白色の花を差し出す玲
「これなんって花?」
「名前はガチャの時出てたけど忘れちゃったわ、すまん」
「仕方ない、まあ名前が分かっても何に使えるか分からないしね」
「そうだよなあ…」
「…食べれるかな?」
「はあ?」
「実は調味料が無くって困ってたんだよねー、ハーブとして使えないかなあって思ってみたりしたんだけど」
「えー綺麗な花だけど、食えるのか?」
「ちょっと試してみるね」
っと言うと悠は新しい包丁とまな板を出し花と葉と茎と根に分け一つずつ鼻に持っていき香りを嗅いだ後、それぞれ手首に置いて押し付けた
「香り的には葉っぱがハーブとして使えそうな感じだな、食べれるかは軽くチェックしてみるね!」
「それで食えるか分かるん⁉︎」
「これだけだと第一段階かな、まだテストがあるけど何となく食べれそうかは分かるよ」
「スゴ!お前物知りだなあ」
「ありがとう、前世の知識が役立ちそうで良かったよ!それより植物の成長速度ヤバくない?」
「ヤバいよ!水探してる間に花咲いてたから!」
「は?ヤバ⁉︎」
「だろ?不思議には思うけど、結果ありがてーよな!」
「アハハ、そうだね!」
ーーー
ふたりで会話をしながら悠は鶏肉を捌ききった
玲はそんな悠の作業風景をただ眺めていた
それでもまだ時間がかかるらしく、ふたりで食べれる物以外で何を作るか相談することにした
「そもそも、この世界って何があって何がないんだろうね?玲は何か作りたい物とかある?」
「俺はやっぱり武器かな?ロマンあるだろ?」
「ロマンあるけどさ、モンスターいる感じかな?」
「ステータスあるってことはいる感じじゃない?でも、乙女ゲームにモンスター出てくるっておかしいか?
モンスター倒す君は美しいね、みたいな展開って女子は嬉しいのか?」
「アハハ!逆じゃない⁉︎モンスターから守ってもらってキュンみたいな?でも、僕ら側にもステータスがあるってことはもしかしたら、守り守られてみたいな展開かもね」
「あー、冒険の中で生死を共にする仲間からいつしか恋心がってヤツね!ハイハイハイハイ!そういうの好き!」
「アハハハハ!僕も好みだね!でも僕らが今やると相手は王子っていうね…」
「マジで、そこだけが残念!」
「だねー」
「まあでも、攻撃手段はあってもいいでだろ?俺は『処刑だー!』ってなったら武力行使で逃げるからな⁉︎」
「その時は僕も手伝うよ!ワクワクする!」
「なんでお前は物騒な時ほど、楽しそうにするんだよ⁉︎怖いわ!」
「いや、そんなことないよ?その方がまどろっこしくないから簡単だなってだけだよ!」
「まあ単純だよな、でも俺らどれくらい強いんだろうな?」
「さあ?今度の休みにでもふたりで実験してみようか?近くの森にでも行ってさ!確か貴族院の裏にあったよね?」
「ああ、あるな!久しぶりに体、動かしたいし行くか!俺はもう茶会ばっかりでイライラしてたんだ!」
「お茶会確かに多いよね!それだけ貴族には大事ってことだろうけどさ、あわよくば貴族社会から逃げたい僕らには苦痛でしかないんだよなあー」
っと言うと悠は手首に押しつけていた物を取り外し手首を観察した後、葉を唇に当てた
「何それ⁉︎」
「気にしないで続けて」
悠ちょっと喋りづらそうにしていた
「じゃあ続けるけど、あれ?なんだっけ?…あーアレだ!森に行くならそれまでになんか武器的なの作りてーな!」
「いいんじゃない?」
「ガチャでインゴット出てたし、スキルを信じて鍛冶してみるか⁉︎」
「物は試しだしねー、スキルもどうすれば発動するとかアバタールーム以外、分かってないしね!やってみなよ!」
「作るならやっぱり剣か?」
「剣って持ち歩いていいの?」
っと言うと悠は葉を舌の上に乗せた
しかし、気にするなと言われていたので玲は今度は何も言わなかった
ただ、よっぽどお腹が空いているんだろうなとは思った
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