72話 お前が言うんかいっ!
ーーー
ノクターンに威嚇された青年とお爺さんは怯えている
それもそうだろう、フードで顔を隠した身長の高い男が低い声で自分達に敵意を見せているのだから
だが、青年を庇うようにお爺さんは前に出る
「うちのバカ弟子がアホな事をしたなら、すまなんだ。」
そう言って3人に向かって頭を下げた
「ノ、「⁉︎違うんだ!その人達に何もされてない
だから、威嚇しないで、ねっ!」
ノクターンの警戒を解かせようと喋りだした玲の一声を聞いて悠は急いで間に入る様に捲し立てた
「…こちらの勘違いだったようだ。失礼した。」
悠の必死な様子にノクターンは威嚇をやめた
「お爺さん、その人も悪いことはしてないよ。
僕達が人集りを眺めていたから、困っていると思って親切に話かけてくれたんだ。」
「そ、そうッス!」
「そうか、なぜ早く言わなかったんじゃ?」
「爺ちゃんが言わせてくれなかったんッスよ⁉︎」
「爺ちゃんじゃない、師匠と呼びなさいと何回言わせるんじゃ?」
「今は関係ないッスよ〜」
「それでは我々はこれで失礼する。」
ノクターンは警戒を解いてはいるがあまり、ふたりには関わらせないようにその場を去ろうとする
「ビビらせちまってすまんな!
話せて楽しかったぜ!またな!」
「あ、それじゃあッス」
ーーー
親切な青年とお爺さんのコンビとはそこで別れ、3人はギルドの受付に向うことにした
受付に向かう途中で悠は玲に小声で話しかけた
「玲!さっき話しかけられて、なんで返事したの?怪しかったじゃん!」
「ん?別に怪しくなかっただろう?親切な青年だったじゃねーか?」
「そうかも知れないけど、変な人だったらどうするの⁉︎」
「その時は適当にあしらったらいいだろう?まず話してみなけりゃ分かんねーだろうが」
「玲があしらえるならいいんだけどさ…
あ、それと、ノクターンの名前言おうとしてたでしょ⁉︎
ダメだよ!なるべく、僕達の名前とかは言わないようにしないと、どこでボロが出るか分からないよ!」
「おう!そうだな、名前は言わない!OK!任せろ!」
「もう!ちゃんと分かってるの?」
「大丈夫だって!」
そんなやり取りをしながら受付に向かうと受付嬢が「今日は登録でよかった?」っとぶっきらぼうに聞いてきた
「このふたりの登録を頼む。」
「はいよ、それじゃあ名前を言って、私が書くから」
「フレ、「イヤー⁉︎」
悠の言葉を玲の叫び声がかき消した
「どうした?」
受付嬢はぶっきらぼうながらも叫んだ玲を心配しているようだ
「大丈夫!大丈夫です!すいません!」
「そうかい?」
「はい!こいつはフ、『フレイ』です!
俺はフ、『フラン』です!」
「『フレイ』と『フラン』ね。じゃあコレ、ギルドカードね。張り出してる依頼書を適当に剥がして持って来てくれたら依頼がうけるるよ。
それじゃあ、楽しい冒険者ライフを〜」
そう言うと受付嬢はさっさと奥に引っ込んでしまった
「え?登録って名前だけ⁉︎こんなんでいいの⁉︎」
「それよりもお前なぁ!やってくれたな⁉︎俺にあんだけ言っておいて、直前の記憶無くしたんか⁉︎」
「いや〜うっかりしちゃってたよ!」
「お前は本当に変なところで抜けてるよな?」
「でも、おかげでいい名前になったんじゃない?『フレイ』と『フラン』だっけ?」
「褒めて話を逸らすなよ〜
まあ、でも俺のネーミングセンスも悪くねーよな⁉︎な、フレイ!」
「いいネーミングセンスだね、フラン!」
ーーー
新たな名前を得て、ふたりはご機嫌で冒険者ギルドを後にした
対象的にノクターンはふたりの後を警戒しながらついて行った
ーふたりの知らないこぼれ話ー
「お前は何をやっとるか⁉︎」
お爺さんが青年の頭を小突く
「爺ちゃん、痛いッスよ!」
「師匠じゃ!
あやつらには関わらん方がよい」
「師匠、何でッスか⁉︎」
「お嬢さんふたり、あの若さで腕輪をしとった。恐らく、お貴族様じゃ」
「でも、貴族じゃないって言ってたッスよ!それに、あんな話し方をする貴族なんていないッスよ!」
「そうじゃが、なるべく関わらない方が無難じゃ。
もしも、お貴族様ならタチが悪いしのぉ。」
「疑惑はあるッスけど、貴族には見えなかったッスよ?悪い人達じゃないと思うッス!」
「だとしても、なるべく関わらない方が良い!お主もいずれ、ワシの腕輪を受け継ぐつもりがあるなら、危機感をもつんじゃ!」
「分かったッスよ〜」
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