4話 人間やめた件
「あ、ダメだ止まんない」
体から棒に流れ出す何かを止めることが出来なくなった悠は驚くほど冷静に呟いた
「いや、焦れよ!明らかに様子がおかしいだろが⁉︎」
急いで玲が悠の握った棒に触れると、同じように体から何かが流れ出た
「これはヤバい!せーので投げるぞ!」
「オッケー!」
「いくぞー!」
「「せーのっ!!」」
ヒュンーーッ
力一杯に投げた棒は女性の力とは思えないほど遠くに飛んでいった
しばらくの静寂の後
ドーーン!!!
とんでもなく、遠い場所で爆発音がした
ふたりはまさかとは思ったが音がした方向は棒を投げた方角である
確認しに行くしかないだろう
森の中を30分ほど歩くとクレーターの真ん中に傷一つ無い棒が乱暴に刺さっていた
「あ、これチートだわ」
「僕たち人間やめたね」
事の発端は5日ほど前
ーーー
ふたりは貴族令嬢として貴族院に通い、放課後は庭園に集まる生活を続けていた
貴族院は優雅なもので、初めの1週間は学内の案内と授業が少々、後のほとんどが交友を深める為のお茶会であった
優雅すぎて住んできた世界が違うことに唖然としたが、比喩ではなく本当に住んでいた世界が違ったので仕方ない
ふたりにとって朗報だったのが、数少ない授業の中にステータスの測定があった
そこで自分達のステータスをようやく知ることができたのだ
でっかい水晶玉が置かれた部屋に1人ずつ入り触れてステータス?を読み取り、それを小さな宝石にコピーして大切に管理するらしい
「皆さま、ステータスは個人情報です!基本的には誰にも見せたり、教えたりすることの無いように管理してくださいませ。もちろん、スキルもですよ。まあ、特別なスキルは周知のものになる事もございますが…」
先生が言うにはこういうことらしい。
最後の一言で皆の視線がフレイアに集まっていた、つまり悠ことフレイアのスキルは周知のものになっているのだろう
ステータス測定の結果だが、
悠ことフレイアは
・命30
・魔250
・魅300
・運40
・精50
スキル『精霊対話』『アバタールーム』
玲ことフランチェスカは
・命26
・魔44
・魅87
・運539
スキル『クリエイト』『ファーム』『アバタールーム』
がふたりの今のステータス
これを踏まえて放課後に話し合った
何故ふたりでステータスを把握しているかって?測定した日に速攻で見せ合ったからに決まっている。
意外と玲の方がスキルが多いだの、悠にしかない〝精″とはなんなのか?など庭園で話し合った
「気になることはいっぱいあるけどさ、僕的にはふたりとも持ってる『アバタールーム』がなんなのか気になるんだよね」
「分かるわー、何だろな?これ
とりあえず、唱えとく?『ステータスオープン!』みたいに」
「また何も無かったらツラいけど、とりあえずはやってみようか!」
「「アバタールーム!」」
ふたりで唱えると目の前にブンッと扉が現れた
「ヤッバ!キタキタ!コレぞ異世界!」
「出来たね!コレはあがる!」
「…触っても大丈夫か?」
「玲ビビりだよねー!」
「うっせいわ!目の前に急にどこにでも行ける系の扉が出てきたら誰でもビックリするだろ?」
「えっ?なんて?」
玲が遠巻きに扉を眺めている間に悠は扉の中に入っていたようだ
「悠さんやー!順応力高すぎるよー!どんな神経してるのー!」
「中普通だったよ?」
「マジ?じゃあ俺も…あ、待ってやっぱりついてきて!」
「本当にビビりだなあ」
ーーー
何の躊躇いもなく扉を開ける悠、恐る恐るついて行く玲
ふたりは玲が出した扉に入っていった。
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