最強戦法
「待って!」
知久の宣言に玲奈さんが抗議を申し立てる。
「ここで無駄な死者を出すことは誰の得にもならない!
一旦、話し合いましょう!」
しかし、知久は一切表情を緩めることはしない。
「玲奈さん、今までギルティによって無駄に殺された人や苦しめられた人っていうのは今ここにいる全員を足してもくだらない。
ここで、一人でも悪を残してしまうことは許せないんだよ。」
知久は俺の方に視線を向けた。
「君のことはもちろん、友人の一人として見ているよ。
だから数日をかけて悩み、それでも君たちを殺す覚悟を決めたんだ。
君もそこには答えてくれるだろ?」
俺にはもちろん覚悟なんて決められない。
俺には仲間を売ることも、殺されるリスクの高いことをやることもできない。
だから、俺は答えを出す。
「俺は、人を殺す覚悟なんていつまでたってもできない。
だから、仲間を守る覚悟を決めることにするよ。
知久、一対一で勝負しないか?
負けた方の陣営はなんでもいう事を聞く。」
これは、知久にとって好都合だった。
俺という一人を倒すだけで全員が言うことを聞く。
島全体が、絆で結ばれていることを知っているから俺の敗北には大きな価値がある。
手っ取り早いかつ、いう事を聞かなかったら聞かなかったでどうにでもできる。
受けない理由がない。
「これは、君にとって唯一の周りを傷つけない手段というわけだ。
いいよ、そんな要求を呑むのはこの一回だけだ。」
そういうわけで。なんとか島内中で争いが起こるという最悪の事態は回避できた。
ただし、辛い状況であることにはもちろん変わりはない。
知久の実力は、ソーエアストで鬼と戦ったときに分かっている。
あれでもかなりの脅威だったが、あれが本気かどうかも分からない。
気を引き締めるに越したことはないだろう。
「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
相手陣地の方からまた声が聞こえる。
聞いたことのあるその声は俺を勇気づける一因となった。
「オイラは剣になれるんだ。
コウイチに力を貸してあげてもいいか。」
そう、その声の主とはスパーダだった。
知久はアッサリと許可を出す。
「ああ、武器の所持は自由にしよう。
君を一人とは数えないさ。」
スパーダが俺の目の前眼で歩いてくる。
「久々の共闘だな、相棒。」
「ああ。」
胸が熱くなるのを感じる。
スパーダとの再会に話したいこともたくさんあったがそんな暇は存在しない。
知久との戦いが始まる。
「それじゃあ、やるとしようか。」
俺は剣を構えて出方を伺う。
と、知久は自分にスキルを使う。
「速度強化!」
そして、ポケットからポーションを取り出した。
それを飲み込む。
適正じゃない速度強化のスキル、そして効果の分からないポーション。
知久は一体何のポーションを飲んだんだ。
だが、その正体を俺は一瞬にして理解することになる。
いや、理解できなかったのがその証拠となる。
気づかぬ間に、俺は何発も衝撃を受けて体が上に吹っ飛んでいた。
知久の速度は格段に上がっていた。
つまり、知久が飲んだのは速度強化のポーションだったのだ。
ゲームの世界では、素早さというのは単なる順番決めでしかないことが多い。
相手に素早ささえ勝っていれば、大抵それ以上素早さを強化することは少ないだろう。
しかし、現実になるとその状況は一変する。
攻撃の速度が上がることは事実、威力が上がることに繋がる。
攻撃をすべて避けることさえできれば、それは何よりも無敵な防御となる。
現実の側面で見ると、むしろ素早いという事は戦闘に置いて主導権を握る要素となるのだ。
それは今の戦いにおいても例外ではなかった。
俺も防戦一方の乗用が続いていた。
それどころか、防御もづることが出来ずボコボコにされているだけだが。
「幸一、君はよく耐えている。
だが、手を緩めることは一切しないよ。」
俺は意識が朦朧としている中、一つだけ絶望から脱却する方法を見つけていた。




