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異世界で都市開発 ~はぐれ島での新生活~  作者: 里下里山
第一章 はぐれ島転生編
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動き出した日常

 ミミリの話を聞いていたら時間はもう昼になっていた。

 朝ごはんを持ってきてくれた時から話していたからかなりの時間がたったことがわかるだろう。

 ミミリも話疲れていたのだろう、その後少し他愛のない話をしていた。

 ミミリが急に立ち上がる。

 

 「さて、そろそろいい時間なのでお昼にしましょうか。

  朝ごはん片づけるついでに、昼も作ってきますね。」


 普段はミミリが料理を担当してくれていた。

 俺も手伝おうかと、立ち上がったが「コウイチさんはここでゆっくりしててください」とミミリに止められてしまった。

 お昼を待つ間、さっきの話を頭の中で整理していた。

 スキルの適正だったり、両親のことだったりここまで辛い出来事もおおかったんだな。

 未だにこの島にいる理由はわからないが、それも後々話してくれるのだろう。


 でも、そんなことより…。

 俺はなんて声をかけてあげればよかったんだろう。

 元々ミミリは同情してほしくてこの話をしたわけではないだろう。

 その証拠に、話の後はきっぱり別の話題をしてくれていた。

 この数か月の間に俺を信用してくれたんだ。

 でも、だからこそ俺のこういう所に腹が立つ。


 大変だったね、これからは俺が力になるから。

 なんて、ありきたりの言葉しか思いつかない。

 間違えていることはわかるけど、正解の言葉が分からない。

 俺、昔からそうなんだよな。

 人からの相談を受けることがあっても答えが全然思いつかない。

 俺自身はがむしゃらに勉強することしかしてこなかったのも原因の一つだろう。


 結局、ミミリが戻ってきてお昼を食べているときも話題を出さないことを俺は選んだ。

 ずっと当たり障りのない言葉を選んで会話してただけ。

 そうやって時間が過ぎて彼女は部屋へと戻っていった。


 はーっと深いため息をつく。

 結局俺にできることなんて建築することだけだよな。

 卵に話しかけてみる。


 「俺ってつくづくなにもできていないよな。

 最近寝てもあのおじいちゃんに会えないんだよ。

 せめてもうちょい俺が強かったらな。」


 そうやって話しかけていたけどただただ空しくなるな。

 結局俺はやれることをやるだけだよな。

 俺は自分の頬をパンっと叩いて気合を入れる。

 悩んだ時には行動を起こすしかない。

 今まで、俺はそうやって生きてきたんだから。


 そっからはもう無我夢中だった。

 いろんな家具を作ったり、安全地帯の範囲ではあるが素材を見つけたりした。

 そうやってスキルの強化を繰り返す。

 やっぱり今一番欲しいのは風呂だな。

 実は、木で風呂を作ろうとしたことはあったのだが木材が水で膨張して状態がすぐに悪くなってしまう。

 そのため、俺は石の加工をできるまでスキルのレベルを上げていった。


 「ふう、こんなものかな。」


 どうやらこの島には体の一部に石を含む魔獣が生息しており、ミミリに取って来てもらっていた。

 そうやってついに風呂が完成した。


 風呂さえあれば、あとは何とかなる。

 ミミリが水を生成し、俺が小指ライターで温める。

 そうすることで、常に綺麗な状態で風呂に入ることができる。

 ようやく温泉の施設が完成した。


 そんなわけで現在入浴中である。

 ミミリとは交代で入ることにしていて先に俺が入らせていただいている。

 ってかそんなに現実は甘くないよ、俺のお風呂シーンで我慢したまえ。

 とはいってもシャワーがあるわけじゃないから無言でお風呂入っているだけなんだけどね。


 というわけでミミリと交代して、俺は部屋に戻った。

 日記をつけるようになっていて、そうやって日課をこなしていたのだが…。

 あの日から卵に話しかける癖がついていて今日も話しかけてしまう。


 「元気に生まれろよー、俺もこんな頑張ってるんだからさ。」

 「なあー、俺頑張ってるよなー。慰めてくれよ。」


 これって周りから見たら結構やばいやつなのかな。

 でもさ、たまに卵とか動くから嬉しくなっちゃってさ。

 ついつい話しかけちゃうんだよね。

 別に、誰から見られているわけでもないからいいけど。


 その時、ドアをノックする音が聞こえて飛び上がった。

 急いで開ける。

 もちろん立っていたのはミミリだった。


 「こんな遅い時間にすいません。」

 「全然大丈夫だよ、お風呂どうだった?」

 「すごくよかったって感想を言いに来たんですよ、でも。」

 「ん?」

 「卵さんとすごく楽しそうに喋ってらしたので。」


 聞かれてたと思った瞬間に急に恥ずかしくなる。

 この島にはプライベートもプライバシーもありゃしないな。


 「あー、えーと、それは申し訳ないデス。」

 「いえいえ、お邪魔でしたか?」

 「大丈夫です、よかったらどうぞ。」

 「それじゃあ、失礼して。」


 なんだかんだ娯楽の少ないこの島では、どうしてもこうやって話す時間は貴重だったりする。

 仲良くなったのもあって、最近では毎日会話しちゃう。

 

 でもさ、いままで仕方ないとはいえ髪もボサボサで恰好もジャージだったわけよ。

 それがお風呂できれいになって、スキル上げのために服も作ったりしているから服もおしゃれになってそして髪も下ろしている。

 正直ちょっとドキッとしてしまう。

 そんな心境を隠すように俺はすぐに話題をだした。


 「最近さ、色々なものを作ったりしているじゃん。

  これから建てて欲しいものとかない?」

 「うーん、そうですね。お洋服だったり私の要望も結構聞いていただいているので今すぐには思いつきませんねー。」

 「そうか、スキル上げにもなるから何かあったら言ってね。」


 正直、転生してからはミミリに助けられっぱなしだからな。

 どうにかして恩返しがしたい気持ちがある。


 「あ、そうだ。卵さんの家を作ってあげたらどうですか?」

 「なるほど。」


 確かにそう、前も言ったかもしれないけどこの卵はダチョウの卵くらいの大きさがある。

 この世界には余裕で現実世界の何倍のサイズもあるやつとかいるからな。

 少なくとも、ずっと俺の家とかは無理だろう。

 お前も家が欲しいのか?やっぱり。

 そう頭で聞きながら卵の方に視線を向ける。


 ひびが入っている卵に。


 こりゃ驚いた。

 平静を装っているつもりだけど、心臓バクバク。

 もしかして生まれてしまうのか?

 ミミリも気づいたようで、目が釘付けになっている。

 

 ひびが更に入る。

 あ、これ確実に生まれる奴じゃん。

 俺もミミリも卵に近づいて行って張り付くように見つめる。

 そしてついに、奴が生まれた。

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