その夜は何を伝える
「というわけでこれからよろしく。」
アナムは軽く挨拶を終えて席に着く。
俺たちははぐれ島に帰る前に中央国へ寄っていた。
はぐれ島へ着くころには暗くなってしまうのと、疲れが溜まってしまっていたからだ。
ついでに、アナムの歓迎会をやろうと国一番の酒場に入っていた。
アナムは一応、中央国に入れないが今日だけは王様も許してくれる。
あっちを見てみれば飲みすぎたグラハさんがぐったりとしていてセイファが介抱している。
そっちを見てみればミミリとアナムが昔話に花を咲かせている。
そんな様子をポテトをつまみながら見ていると幸せな気持ちになる。
ちなみに俺はお酒は飲んでいない、一応未成年だから。
と、俺の隣でおちょこでゆっくりと飲んでいたフィーロさんが話しかけてくる。
「仲間が増えてきたのは嬉しいことだけど、僕たちも肩身が狭くなってきたものだね。」
その話にカイゼも交じってくる。
「同感だな、そろそろ男の仲間も迎え入れたいところだ。」
よくよく考えてみたら、カイゼが仲間になったのってオペラードの時からだもんな。
そう考えると、この男連中とも付き合いが長いと気づく。
「何だかんだフィーロさんはこの島に来てから長いですよね。」
「そうだよね、僕が来た頃はまだ島は全然発展してなかったもんね。」
「ああ、オペラードもよくあんな島を見つけることが出来たものだ。」
俺たちも結局はぐれ島での思い出話に、花を咲かせていた。
最近は出かけることが多いもののやっぱりあの島は大事な場所だと再認識する。
もちろん、こうやって外で遊んでる時間も楽しいけどな。
いつの間にか俺の膝に座っていたヒーナも言う。
「ヴェラルも来たらよかったのに。」
そうだ、島にヴェラル様を残してきている。
考えてみれば、ヴェラル様は中央国に一度も来たことがないんだよな。
今度、用事があるときにでもお礼をしなくちゃいけないと思っていた。
ここに、ヴェラル様も連れていこう。
そんなことを考えていたらミミリがこっちに来る。
「もうみんな眠そうにしてるみたいなので宿に行きましょう。
明日の朝出発でお願いします。」
「え~、ヒーナもお酒飲みたかった。」
「それは絵面的にだめ。」
俺はヒーナのことを制してから仲間を起こす。
両脇に人を抱えながら、店を後にした。
そういえば、知久たちは何かを見つけることが出来たのだろうか。
そんなことをふと思う。
ーーーーーーーー
知久はオルフィス大陸に来ていた。
向かいに座っているのは魔王、ディジャバーン。
後ろにいる仲間たちもその覇気にびびり上がっているのが分かる。
「私に会いに来るとは、いったい何の用かな。」
「僕たちはある集団について興味を持ち、調査を続けていた。
その集団に魔王様も興味津々みたいだからさ。」
「ギルティか…?」
「まあ、そういうこと。
健太、ちょっと来てくれるかな。」
異世界ギルドの一員である健太という男が不思議そうに前に出る。
知久の隣に立った。
「一つ証明するから見ててよ。」
知久は、立ち上がり健太の腹部に向けて強烈な蹴りを繰り出した。
健太は吹き飛ばされて、壁に打ち付けられる。
「大塚健太、君は器物損壊罪。
つまり、ギルティのメンバーだね。」
「な、何でバレてんだよ…!」
「確証はなかったよ。
今できたけどね。」
もう一度蹴りを入れられ健太は気絶する。
そしてディジャバーンさんの方をもう一度見る。
「ギルティの本拠地はどこにもない。
むしろ、ギルティのメンバーはどこにもいない。
でも、それは違ったんだ。
魔王様の所には、バイバンさんがいた。
そして、俺たちのギルドにも健太がいた。」
ギルティ、都市伝説的に語られていたその名前はようやく化けの皮がはがれ始める。
そして、ようやく特定できるピースがそろい始めた。
「つまり、人類が存在するところには必ずギルティが存在する。
でも、ギルティに関わりがない場所があったよね。」
ディジャバーンは全てを理解する。
友のために今すぐ動き出したいという気持ちに満たされる。
「一つは、大鬼の島。
ここは、一応幸一たちに調査に行ってもらってはいるが。
おそらく、大鬼がいる以上拠点を建てる余裕はないだろう。」
「そしてもう一つ、もうわかってるよね。
僕らは今からそこへ向かう。」
「最強の精鋭を集めよう。
我らは最高戦力でそこを叩く。」
段々と周りの景色が明るくなっていく。
色々な要素、動きを見せたその夜は普通の人からすれば一瞬の出来事だっただろう。
さて、起きてきたヴェラルは今日も島の外を見る。
見えてきた、鳥の上に人がいる影を見つけてふふっと微笑みながら拠点までの帰路を辿る。
はぐれ島にも朝がやってくる。
ー4章に続く




