付きまとう呪い
大鬼の一人、ツバリ。
適正スキルは、鉄。
その情報を、フィーロさんから聞いて剣を構える。
「悪いが、ここを通すわけにはいかない!」
長い剣を俺に向かって振り下ろす。
そして、スキルで後ろにも剣二つを生成していた、それは俺の方に一直線に飛んでくる。
三方向からの斬撃、かなり捌きづらいはずだ。
俺は体を捻り、一回転の斬撃ですべての剣を弾き飛ばす。
持っていた剣が後ろの地面に刺さったのを見て、ツバリは尻もちをついた。
「何ていう強さだ…。」
周りを見渡してみれば、仲間が他の鬼を制圧して集落の人の救助に当たっていた。
俺は今一度、ツバリの方に向き直って簡潔に質問をする。
「集落の長、姫はどこにいる。」
「お、親方が拠点まで連れて行った。」
「その拠点とやらはどこにある。」
「この島の中心、あの火山に向かっていけばある。」
俺は剣の鞘で、ツバリの首の後ろを強く叩く。
ツバリの気絶を確認して、俺は一旦深呼吸をした。
ああ、本当に修行しといて良かった。
フィーロさんからの事前情報があったとはいえ、鬼を圧倒できるくらいのレベルにはなっていた。
もう、ここまでくると剣が何個も飛んでくるなんて普通なんだな。
建築しているだけだったあの頃はもうとっくにないという事だ。
その後少し、集落の人からも話を聞いてみるがツバリの言っていたことと矛盾はない。
つまり、本当に姫は連れていかれているようだった。
早急に行動をしなければいけない、仲間たちをすぐに集める。
「なるほど、姫は確かに僕たちにとって命の恩人だ。
死なれるわけにはいかないね。」
「よし、早速助けに行きましょう。」
フィーロさんは、首を振る。
「僕はここに残らせてもらうよ。
この後の戦いに僕はついていけそうになさそうだ。
それに、カイゼ君とヒーナのためにも待つ人が必要だろう。」
セイファもスキルによって、集落の人たちの治療を行っている。
カイゼとヒーナもかなり消耗しているかもしれない。
この二人はここに残ってもらった方がいいだろう。
というわけでヒーナとグラハさんを連れて、俺は火山の方向へと向かっていく。
その道中、グラハさんは気になっていたことを話す。
「ねえ、アナムのことなんだけどさ。
やっぱり、その拠点って呼ばれる場所にいるのかな。」
「分かりません、けど拠点に何かあることは確かです。
その姫さんが何かを知っているのかもしれません。」
俺たちは、その後喋る余裕もなく中央へ中央へと向かっていく。
その道中、何かと出会うことはなかった。
だがそれが、更に不安を高め不気味な雰囲気を醸し出している。
そしてついに、火山を囲むように出来た巨大な建造物が顔を出した。
この中に答えがある、俺たちは意を決して扉を破壊した。
呪われた一族
人間にはどうしても超えられない壁が存在します。
例えば性別、男と女ではどうしても違う部分が出てきてしまいます。
例えば身長、どうしても手が届かない場所は存在してしまいます。
もちろん、どうにか見せる方法は存在します。
男性が女装をすれば、その人を男性と認識する人は圧倒的に少なくなります。
肩車をしてみれば、その人の手の届く範囲は大きく広がります。
それは、こんなケースに置いても言えるでしょうか。
その世界では、髪の色が価値を決める文化が存在します。
それは、髪の色によって人の適正が出てしまうからです。
赤は炎、青は水、黄色は雷、緑は植物。
その中でも、異質なものが存在してしまいます。
それが灰、死を適正とする色です。
灰色の髪の母と赤い髪の父、そんな両親から生まれた女の子の髪も灰色でした。
代々続くその灰の髪の一族は、能力を使うことを諦めて過ごしてきました。
他がスキルを使っている間勉強をしていれば頭が良くなります。
そうして、上に上がってそこで結婚してエリートの一族として世の中を生きてきたのです。
今、生まれた赤子もそうなるはずでした。
でも、成長していくにつれ父の持つスキルにあこがれを抱くようになります。
そうして、火のスキルをひたすらに磨き続けました。
ある日、弟が生まれました。
髪は赤色で、とっても濃い色をしていました。
初めてスキルを使ったときの衝撃は誰もが忘れることはありません。
姉が数年かけて習得したスキルよりもあった王的に強かったからです。
母は、姉に勉強をさせるようになりました。
自分たちはそうやって名を上げていったからです。
姉はそれを理解していたからか、勉強を必死にやりました。
でも、寝る前に少しだけスキルの勉強もやりました。
それだけ、それだけで姉はあっさり捨てられました。
身寄りのない彼女は知らない人の家を巡り勉強やスキルを磨きながら旅をしました。
そしてようやく夢を叶えることのできる可能性にたどり着きます。
ここまでしてきた努力というのは素晴らしいことです。
では、あなたがこの世界に住んでいてこの努力をしてきた彼女が成功すると思うでしょうか。
髪の色だけじゃない、その能力、その人柄、何かが違っていた時、世間は認めないでしょう。
落ちていけば、当たり前だとそう思うでしょう。
さて、その呪いの壁はどうやって超えるのでしょう。




