右手に矛、左手に盾
大鬼の島についてすぐその異変に気付く、というか気づかされる。
島に誰かが来るのが珍しかったのか、鬼たちは不思議そうに様子を伺っていた。
出鼻を挫かれてしまうかもしれないという不安ももちろんあったが。
「集落の人たちは無事なのか?」
「心配なら見てこいコウイチ、ここは俺が相手をしてやる。」
カイゼは一歩前にでて、戦闘態勢を相手に見せた。
注目は一気にカイゼに集まる。
「先に行け、今回別れるのは恐怖からではない。
勝利への圧倒的自信を持っているからだ。」
「任せるよ、親友。」
そうして、幸一たちは億の方へと消えていく。
もちろんそれを追う鬼はいたが、吹っ飛ばされてしまった。
一人の少女によって。
「ここは俺に任せておけと言っただろうが。」
「ヒーナもここに残った方が効率的、でしょ?」
ヒーナは巨大化によって一気に鬼を吹き飛ばしてしまう。
一瞬で全員が気絶してしまった。
「どう、ヒーナ凄いでしょ?」
「はあ、俺にも恰好くらいつけさせろ。」
「恰好つけなくても、カイゼは強いよ?」
「そういうことじゃなくてだな、先を追うか。」
だが、そんな簡単にはいかない。
ゆっくりと鬼が近づいてきた。
それも、明らかに今まで鬼とサイズが違う。
「おいおい、人間が鬼を倒してしまうなんてな。」
「まあまあ、おいたちがいれば負けることはないだろう。」
赤と青の恰幅のいい二人組の鬼だった。
カイゼは、瞬時に一撃を入れる。
赤の鬼が前に出て大きな盾でそれを弾き飛ばす。
空中に浮いたカイゼに向けて青い鬼がこん棒を振ると、それが衝撃波となってクリーンヒットする。
「カイゼ!」
ヒーナは何とか飛ばされるカイゼを背中で受け止めて回収した。
「なんつー強さだ、一人が守り一人が追い打ちをかける。
あの戦い方には隙が少ない。」
それを聞いた大鬼たちは嬉しそうに言う。
「そうさ、守ることが得意なおいと。」
「攻めることが得意なおいのコンビネーション、逃れることはできない。」
お互いは少し離れた距離か様子を見あっていた。
ヒーナはその緊張状態を見兼ねて、作戦を言ってみる。
「どうする、ヒーナたちも二人だから分断すれば。」
「いや、あいつらはどうやっても二対二に持ってくるだろう。」
攻めや守りに特化した適正というのはその分野において恐ろしい強さを誇る。
その点、他の部分においては他の適正に比べると圧倒的に劣ってしまうのだ。
二人の大鬼はそれを理解している、それに近づけない以上分断は好ましい選択とは言えない。
「俺に、一つ考えがある。
奴らは守りを起点に動いている、そこを利用しよう。」
カイゼとヒーナは作戦を決定し、共有すると地上に降りた。
二人の大鬼はグッと身を引き締める。
それでも、あちらから攻撃を仕掛けてくることは一切しない。
カイゼは今持てる力の全てを使い、風を手に集中させた。
そして凝縮された力を一気に上に放った。
「おいおい、あいつらは何をやる気なんだ。
もう、攻めた方がよくないか?」
「いや、ここはさらに慎重に相手の動きを見るんだ。」
そんな話をしているときにはヒーナは上に上がっていた。
そして発生した風を巻き上げていく。
いつの間にか、その場には台風が吹き荒れる。
カイゼはその中心で不敵に微笑む。
「お前らは俺の怪しい行動を見ても攻めてこないと思ったよ。
コンビネーションは確かに強いが、それ以外の行動をするという思考をロックする。」
台風は急速に広がっていく。
逃げられないほどに。
「畜生!こんなの防ぎきれるわけがない!」
「おいの攻撃も一切届きやしない!」
二人の抵抗も空しく、上へ上へと突き上げられてしまった。
「この台風は中心にいれば、盾になる。
つまり最強の矛で、最強の盾だ。」
台風が解かれた時には、立っているのはカイゼとヒーナのみだった。
「流石カイゼ、やるー!」
「ああ、だがここまで派手な技を使ったんだ。
この後、追手が来るぞ。」
「そこまで考えてるなんて、やっぱりカイゼは優しい。」
二人はもう休みたいという体に鞭を打ち、再び敵を待った。
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集落にもその怒号が響く。
台風は全員の目を奪った。
集落を襲っていた親方と呼ばれる大鬼の耳にも警告が入った。
「島から部外者が入ってこないように警備していた奴らが全員やられた!」
「そんなわけねえ!いったい誰に!」
「知らねえ人間たちだ。
全員が化け物級に強い!」
それを聞いて、親方は姫を抱えて走り出す。
「一体何が起こってやがる。
俺は一度、拠点まで戻る。
集落の奴らが全員殺しておけ!
それと、台風の方にも鬼を向かわせろ!」
それからすぐに、集落の方に数人人が入ってくる。
大鬼の一人が剣を構えた。
「まさかもうここに来るとは、人数は少し減りましたがそれでも我らの勝利は動かない。」
幸一は剣を抜く。
そのオーラは、度々の修羅場を乗り越えた大鬼でも腰を抜かすほどだった。




