表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界で都市開発 ~はぐれ島での新生活~  作者: 里下里山
第三章 異世界への扉編
53/64

ルールは壊すためにある

「まさか、こんなに早く戻ることになるとわな。」


 俺はヒーナの背中の上、独り言のように呟いた。

 大鬼の島、俺たちが前回かなり危険な目にあったところだ。

 もちろん、この数週間強くなった実感は持っている。

 しかし二か月も経たず再びこの場所を訪れるのはかなり抵抗がある。


 「今度は、私たちがいます。

  それに優先的に私が皆さんを守りますよ、私の我儘なので。」

 「そういうのはいいの!」


 セイファが、ミミリの頭をぐりぐりする。

 到着するまでのつかの間のこの時間がひどく長く感じるが、終わってほしくないと思う。

 そんな意識をかき消すように話題を途切れさせないようにする。


 「セイファは、来てよかったの?」

 「んー、ヴェラルもいるしね。

  正直、ヴェラルのこと島で一番信頼してるからなあ。」


 まあ、あの恐ろしいほどの強さは最近身に染みて感じている。

 俺もヴェラルが島に残ると言ったときは不思議と島の方は大丈夫と思った。

 大鬼の島の脅威でそんなこと考える暇もないってのも本音だけど。

 セイファは目的地に近づいているのを感じたのか、確認を取り始める。


 「いい?、私たちの目的はミミリの親友であるアナムの生存確認。

  そしてアナム本人の意思もあるけど救出よ。」

 

 意地悪だと思ったが、一応聞いておく。


 「救出までするの?

  中央国での罰とかに関してはどうするの?」

 「アナムが中央国から受けた罰は、ヒューマ大陸の出入り禁止。

  つまり、はぐれ島なら受け入れられる。」


 そこで気づいたように、グラハさんが言う。


 「そうだ、あの姫って呼ばれていた子って仮面で素顔を隠していたでしょ?

  あの子がアナムかもしれない。」

 

 俺もそれは思っていたことだったが、すぐさま否定する。


 「いや、確かにお面で素顔は見えなかった。

  それでも角は生えていたよ。」


 鬼の象徴と言えば、角だがあの集落の人たちにもそれが付いている。

 多分、鬼と人間のハーフといったところなのだろう。

 もちろん突き出た角は、仮面で隠すことは出来なくて姫にも角が確認できた。

 アナムは普通に人間なため、あの姫はアナムではないだろう。

 それを聞いてグラハさんはがっくりする。


 「じゃあ、一から探さないとだめかあ。」

 「姫に会いに行くこと自体は悪くない判断だとは思うんだけどね。」


 好き勝手各々に喋っていた俺たちを見かねて、セイファが手を上げる。

 全員が静まり返った様子を見て、簡潔に告げる。


 「目的は話したからこれだけ聞いて。

  今回は戦闘目的じゃない、強くなったからと言って無駄な戦闘は避けること。

  とにかく、生きてまた島に帰りましょう。」


 そこは共通認識、全員が頷いた。

 やがて、その赤々しい島が忽然と姿を現した。


ーーーーーーーー


 「姫!、姫ー!」

 「どうしたのそんなに焦って。」


 幸一達が去って数週間。

 集落には再び日常が戻ったはずだった。

 食べ物を集め、鬼を集団で撃退し、全員が平和で健康的に暮らす日常。

 だが、気が動転しているその部下の様子は明らかに平和とかけ離れていた。


 「て、敵襲です。」

 「そう、まだ我らが拠点に直接攻め込んでくる愚か者たちがいたの。」

 「違うんです姫様、そんなレベルじゃないんです。」

 「どういう事…まさか!」

 「攻め込んできたのは大鬼です!」


 急いで我が家を出る。

 集落の民たちの動揺っぷりから何か恐ろしいことが起こったことを察する。

 でもまさか、その中でも一番最悪なケースとは信じたくない。


 「ははっ久しぶりだな、可愛いお姫さん。」


 そっちの様子を見ると一番見たくない顔、いやその顔すら見るのに苦労する大きな生物。

 息が詰まりそうになるほど地獄のような空気を自分が発している事に少しして気づく。


 「返事もねえのか、礼儀がなっちゃいねえ。」

 「いや、あなたたちとは友好的な関係だと思っていたけれど。」

 「ああ、そうさ友好関係さ。

  でも、それは今成り立たないようだ。」


 その巨体から出ているとは思えないほどの驚異的な速度で、仲間の一人が真っ二つになる。

 倒れこむもの、逃げ出すもの、叫ぶことしかできないもの。

 そのリアクションは様々だが、全員が絶望している事実だけは心を譲ろうとしない。


 「俺から一つレクチャーしてやるよ。

  強さが違いすぎるとき、それは関係が成り立たない。

  敵対関係にはならず、一方的な虐殺になる。

  そして友好関係にはならず、弱い者は奴隷と化す。」


 ところどころで大鬼たちの笑い声が響き渡る。

 悲しすぎる正論に集落の者は立ち尽くすしかなかった。

 大鬼は続ける。


 「俺たちはようやくこの島を出ることにしたよ。

  ゴミ掃除のアルバイトは終わりだ。

  今はもう、奴隷しか募集しちゃいねえ。」

 「親方ー!」


 今度は鬼の一人が走ってきた。


 「あ?どうした。」

 「島から部外者が入ってこないように警備していた奴らが全員やられた!」

 「そんなわけねえ!いったい誰に!」

 「知らねえ人間たちだ。

  全員が化け物急に強い!」


 ここは大鬼の島、鬼ではなく大鬼が全ての実権を握る。

 だが、そこに小さい小さい問題が転がり込んだ。

 その問題が膨れ上がり、ついには島ごと食ってしまうかもしれない。

 恐怖におびえた少年はそれすらを力に変え、今逆襲を始める。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ