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異世界で都市開発 ~はぐれ島での新生活~  作者: 里下里山
第三章 異世界への扉編
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共喰い

 いつの間にか俺たちは島まで戻ってきていた。

 カイゼの話なんかも一通り聞いた。

 転生者ギルドも調査に時間がかかっているようで俺たちにやれることはない。

 そのことが大鬼の島で感じた無力さを更に強める。


 とは言っても以前の俺とは全然違う。

 こんな所で心がぽきりと折れたりはしない。

 俺はひたすら自分の腕を磨くことにした。


 とにかく、とにかく強くなるしかない。

 自分を追い込んで誰にも負けないようにしたい。

 そうじゃないと、誰も守ることなんかできやしない。


 そうして、俺はひたすらに剣を振り続けた。

 もちろん、どんどん強くなっている気がする。

 俺は前世の頃からこのやり方でひたすらに実績を上げてきた。

 俺は不器用だからこそ、こうやって強くなるしかないんだ。


 「おい、相手してやろうか?」


 こんな所に俺がいるのを分かる人なんて一人しかいない。

 ヴェラル様が森の奥から姿を現す。


 「追ってきた?」

 「いや、シンプルに目に入った。」

 「拠点から俺のことが見えるなんてチートだな。」

 「違う違う、これは偶然だよ。

  ここは滅多に人が来ないから我のお気に入りのポイントの一つなだけだ。

  グラハとの修行の後にコソ連なんて感心だな。」

 「俺を止めようとしてる?」

 「まさか、感心したと言ったではないか。

  むしろ、特訓に付き合ってやってもいいくらいだ。」


 最近行動を共にすることが少なかったから忘れていたが、ヴェラル様は驚異的な強さを誇る。

 この人との戦いで何か得るものがあるかもしれない。

 

 「それじゃお願いしまスッ…!」


 そういった瞬間、顎に強烈な蹴りが入り俺は気絶した。

 目を覚ますと、ヴェラル様が近くの椅子に座っているのが目に入る。

 俺が起きたことに気付いたヴェラル様は一言だけ。


 「明日も相手してやる。」


 そう言って、その場から立ち去って行った。

 俺はいまだに痛む下顎をさすりながら、明日からの決意を固めていた。

 ヴェラル様に少しでも追いつければ、あの鬼にも対抗できる強さを得ることが出来る。


 そこから俺は毎日ヴェラル様と戦い続けた。

 二日目からは少し、ヴェラル様も遊んでいるようで多少の時間を保つことが出来るようになる。

 しかし、少ししたら強烈な一撃が飛んできて俺は気絶してしまうのだ。

 それでも次の日にはアドバイスをくれるし、強くなる実感が段々と大きくなっていく。

 それに周りも感化されていたようで、皆が何かしている様子もよく目に映る。


 その日も、俺は一撃を受けてその場に倒れこんだ。

 だが、俺はギリギリで立ち上がる。

 ヴェラル様もそれを見て驚いているようだった。


 「建築屋、我の攻撃を受けて立ち上がった人間など数えるほどしかいない。

  正直、この短期間でここまで強くなったのには本当に驚いたよ。」

 「それでも、本当にギリギリだ。」

 「ああ、そのギリギリを耐えた奴が数えるほどしかいないという話だ。

  お前は十分強くなった、もう我との授業は終わりにしよう。」

 「いや、まだまだ。」


 ヴェラル様は呆れたように首を振った。


 「全く、お前は本当に頑固者だな。

  それでこそ、我の仲間だ。」


 まだまだ、俺は強くなる。

 今日だって倒れるまで挑み続けてやる。

 その日、俺が気絶してしまったのはその後わずか五秒後だった。


 さらに数週間後、ミミリに言われて俺たちは招集された。

 俺はグラハさんとの剣の修行の後、城の会議室に座る。

 といってもまだまだ時間があってここにいるのは、俺とグラハさんだけなんだけど。

 グラハさんと雑談程度に会話を嗜む。


 「コウイチ君、最近凄く調子がよさそうだね。」

 「え、そうですか?

  そんなに変わったことしてないと思いますけど。」

 「いやいや、島に戻ってきてすぐは凄く疲れた顔をしてたよ。

  その理由はもちろん分かってるつもりだけどね。

  私にだって、思う所もあったからさ。」


 それだけ、俺たちにとって大鬼の島のことは傷として残っている。

 その傷を乗り越えて、強くなれる仲間たちであることももちろんわかっているつもりだけど。


 「でもさ、今はむしろ元気そうなくらいじゃない。」

 「うーん、そりゃ最近は気絶させられて寝て過ごすことが多くて…。」


 俺はそこで初めてヴェラル様の意図と優しさを知った。

 そう、俺は気絶をすることによっていつの間にか寝るというか体を休める時間が増えていたのだ。

 それが、むしろ効率を上げ強くなっていくことに繋がっていた。

 ぞろぞろと仲間たちが入ってくる、そこにはヴェラル様の姿もある。


 「ヴェラル様、ありがとう。」

 「ようやく気付いたか。

  お前は本当に頑固者だからな。

  我の優しさにもっと感謝しろよ?」


 ああ、本当に感謝しかない。

 この人は意外と、周りを見てたりするな。


 さて、そうしている内に満を持してミミリが姿を現す。

 全員が集まったことを知ると、早々に話を始める。


 「私の中で悩むのは違うと思うので、とりあえず話させてください。

  また、私のわがままを聞いていただけないでしょうか。」


 冗談や何かを言うテンションではないことに気付き、皆静かにミミリの方を見つめる。

 

 「コウイチたちが大鬼の島に行ったという話は聞きました、そこで危険な目に遭ったことも。

  だからこそ私は大鬼の島に行かないといけません。」


 大鬼の島、まさかこんな早くその名前を聞くとは思わなかった。


 「私が、ここはぐれ島に送られたときアナムは大鬼の島へと送られました。

  もちろん、そう簡単に死ぬようなことじゃないことは分かっています。

  だからこそ彼女がその危険な島でどうなっているのか知りたい…!」


 アナム、前ミミリの話に出てきた彼女の親友だ。

 それだけにミミリは彼女のことが気になっているようだった。

 

 「危険なことも、恐ろしい鬼がいることももちろん理解しています。

  それでも私は行かないといけないんです。」


 皆、多少の悩みや迷いはもちろんあった。

 それでも、結局誰かが声を上げてくれるのを待っているだけだろう。

 そして声を上げるのはいつも俺だ。


 「俺は行くよ。」


 他の仲間たちも俺の声を聞いて次々に頷く。


 「我は島に残させてくれ。

  その代わりこの島だけは絶対に守る。

  大鬼の島の方もこんなに心強い味方がいれば心配ないだろう。」


 ヴェラル様がそう言いながら、俺の方を見る。


 「お前の強さは我のお墨付きだ。

  力試しでもしてこい。」

 「ああ。」


 俺は強くなった。

 皆が強くなっていく様子を見ていた。

 これは俺たちにとってのリベンジマッチだ。

 先に会議室を出る仲間たちの背中は大きく見える。

 俺も部屋を出る。

 最後に部屋に残ったのはヴェラル様だった。


 「我はとんでもない怪物を生み出してしまったようだな、コウイチ。」

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