カイゼ
幸一達がソーエアストや大鬼の島で旅をしていた頃、中央国ミドレアでも動きがあった。
セイファ、カイゼ、ヒーナは並んでいた人たちを横目に見ながら、城へと入っていく。
カイゼは自分がこっちに残された理由がよほど気になっているようだった。
「おい、結局俺は何でこっちに残されたんだ?」
「カイゼって意外と勘が鈍いのね。
まあ、悪いことじゃないから安心しなさい。」
納得はしていないが、何度聞いてもはぐらかされると思ったのだろう。
カイゼは黙って後ろに下がる。
さて、王は忙しいようで幹部の男から話を聞くこととなった。
客人の部屋に招待される。
値段が高いことだけは分かる紅茶をセイファ以外は不器用な様子で飲んでいる。
ヒーナに関しては苦手だったようで、一口飲んだらカイゼに寄越した。
さて、さっきの幹部が資料だったり契約書だったりの難しそうな書類を持って戻ってくる。
そこでようやく話が始まった。
「まあ、メインは移住民についてよね。」
「話が早くて助かります、セイファ様にお願い頂いていた移住民はもちろんのこと是非そちらで過ごしたいという方もリスト化しています。
良かったら目を通していただけると助かります。」
そこからは少し難しい話をしていたようだ。
カイゼとヒーナは窓から見える代わり代わりの景色をボーっと眺めていた。
しかし、この話の重要性に関しては理解しているから無理に口を突っ込んだりしない。
移住民の中にはもちろん悪と呼ばれる人もいるだろう。
そういった人たちを入れることで島自体が一気に崩壊していくこともあり得ない話ではない。
しかし、力のない者たちがここで見捨てられてしまった場合奴隷に使われてしまったり非人道的な実験に使われてしまったりと立場を失ってしまう人たちもいる。
だからこそ慎重に選択をしなければいけなく、セイファのその力には皆信頼を置いている。
いつの間にか大体の話は済んでいたようだ。
幹部は資料をまとめ始めている。
セイファも疲れたと言ったようなアクションと表情を見せていた。
「じゃあ、ちょっとお願いしてもいいかしら。」
「ええ、もちろんです。
待機して頂いているので呼んできます。」
そこから幹部がいなくなって戻ってくるまでのそう時間はかからない。
幹部は一瞬、セイファとアイコンタクトをした後人を部屋に招き入れた。
「カイゼ殿!」
カイゼはその声、その呼ばれ方に聞き覚えがあった。
懐かしい感情がカイゼの心の中を支配する。
現れたのは、カイゼが元々所属していた集落の者たちだった。
「お前、ああ。」
カイゼは言葉すら思いつかない。
元々、集落の長であったカイゼは出先から戻ってきた時集落の崩壊を知った。
建物は何もなかったかのように消え失せて、そこにいた人は感情を失った人形のようにその場に転がっていた。
感情を奪ったのはチーフだったのだろう、今目の前にかつての同胞がいた。
その発想に至らなかったのは自分の怠慢だと、カイゼは自分を少し責める。
しかし、ようやく会えたことによる幸福感と安堵感が感情のほぼを支配したようだった。
「聞きたいことはもちろん、たくさんある。
それでもまずは、生きて帰ってくれてありがとう。」
「はい、色々な原因でなくなってしまったものももちろんいますがその大半は生存しています。
感情が戻ったあと、カイゼ殿が色々動いてくれていたことも聞いています。」
「そんなことは、もういいんだ。」
カイゼは優しい表情でそこにいた集落の面々を一人ひとり抱きしめていく。
オペラードといた頃のカイゼからは考えられない表情だった。
今すぐに来るというのは難しいが、それでも集落の人たちは一週間以内に島に来れるそうだった。
これまでに比べたら短い別れだと、冗談交じりに別れる。
セイファたちはその後、城を後にする。
それぞれが何か暖かい気持ちを抱えていた。
いまだ列は長く続いているようだった。
その列が急に隊列を崩し、騒めきだす。
「おい、奴隷にしてやるって言ってんだ。
もっと酷い扱いを受けるよりよっぽどましだろうが!」
男たちが奴隷を集めるために暴れまわっていた。
無理やり、数人で押さえつけて連れて行ってるようだった。
セイファは助けようと、走り出そうとするがカイゼに制される。
カイゼは瞬く間に現場へと向かっていた。
「おい、邪魔してんじゃねー!」
カイゼは男たちの攻撃をすべて躱していく、それは風のように。
男たちは困ったようにカイゼの様子を見ることしかできなくなっていた。
「ギオ・ロープ!」
男たちの周りに風が起こりその風圧が男たちを強く締め付ける。
そして、数分もしないうちにその強烈的な痛みに耐えきれず気絶をしてしまった。
セイファたちも駆け寄る、がその前に大きな歓声が上がっていた。
「カイゼ、大丈夫?」
「ああ、俺は嬉しいんだ。」
「嬉しい?」
「ようやく俺は自分の目的を果たすことが出来た。
後は、親友のためだけに動くことが出来る。」
そう言ってカイゼは完成を背にその場を去る。
今夜は気持ちのいいそよ風が吹いていた。




