鬼ヶ島
あれから俺たちは、東の国ソーエアストを出ていた。
この世界に起きている異変、つまりギルティが関わっていそうな事象について調査するためだ。
もしかしたら拠点の発見をすることができるかもしれない。
今、向かっているのは大鬼の島と呼ばれる場所だ。
はぐれ島と肩を並べるほど危険な島と呼ばれていた場所で鬼が住むという話だ。
つまり、ソーエアストを襲った鬼は大鬼の島から来た可能性が高い。
そのため、大鬼の島へと向かうことになったのだ。
転生者ギルドから借りた船に乗り、グラハさんが操縦していた。
「グラハさん、よく船の操縦なんてできるね。」
「魔王様の付き添いとして、移動手段の操縦などは全て習得済み。
そんなことよりほら、島が見えてきたよ。」
突如顔を出したのは赤をメインとした、島だった。
真ん中に見える火山がその島の危険性を表している。
イメージで言えば、まさしく鬼ヶ島って感じ。
さて、ようやく到着して沖に船を泊める。
マグマの大きさに意識を奪われていたが、島自体の規模もでかく足を踏み入れることのできる場所もたくさんあった。
俺たちは中へ中へと移動していく。
そもそも、鬼の大半が悪い奴とは限らない。
むしろ、ソーエアストに来ていた奴らは悪さをして島を追われ逃げ込んできたのかもしれない。
結果から言うと俺の予想は半分当たっていた。
あの鬼たちは、島を確かに追われたのだろう。
何故なら、弱すぎたから。
俺たちと、目が合ったその鬼はソーエアストに現れた鬼よりも一回りも大きい。
そして、そいつから感じる殺気はレベルの違いを表していた。
振り下ろされた一撃は奇跡的に避けたという言葉が似合う。
それほどまでに、俺たちじゃ適わない。
「全員走れ!」
グラハさんの言葉で俺たちは一斉に走り出した。
いつかは、追いつかれてしまうだろうが抵抗の手段はこれしか存在しない。
後ろから聞こえてくる足音と振動で追いかけてきていることが分かる。
ここで、作戦を変更せざるを得ない。
俺たちは顔を見合わせて、仕方なく道を分かれることにした。
生存確率をなるべく上げるように、トカゲのしっぽ切りのように全員が分かれる。
そして、運悪く追われ続けてしまっているのは俺だった。
段々と息が上がっていく。
死んだふり?降参?ああ、こんな時に限って変な案しか思い浮かばない。
だが、まるで蜘蛛の糸のように一筋の光が差した。
そこに現れたのは、人が一人余裕を持って入れそうな洞穴だった。
俺はそこに入り込む、本当に助かった。
俺を追っていた鬼は俺が中にいることを確認する。
そして、洞穴と距離を離す。
危ないところだった。
だが、鬼はちょっと離れると足を止める。
俺を倒せなかったことに未練があったのだろうか。
だが俺の予想はことごとく外れる。
抉るように振り上げたこん棒は大地ごと吹き飛ばす。
洞穴と呼ばれていた場所はもうなくなり、寝そべる俺だけがそこにいる。
一度、疲れを認識してしまった体はまた走り出す余力を残していなかった。
俺は、腰から剣を抜き取る。
自分の運命の限界を感じてそれでも戦うことしかないと知る。
半泣きで、それでもなるべく自分の方が強いと思わせるように堂々とした態度で鬼に向かう。
「あああああああああああああああああ!」
鬼が余裕そうにゆっくり振ったこん棒にめがけて全力で向かっていく。
死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ。
走馬灯がぐるぐると廻っていく感覚を初めて知った。
「撃てー!」
鬼は急に体制を崩した。
いつの間にか、俺と鬼は囲まれていた。
人数は少なく見積もって、三十人はいるだろうか。
鬼とは違う人間に近い姿だが、頭には角が生えている。
手に握っているのは、火縄銃という奴だろうか。
交代で打ち込んで、鬼に近づけないようにさせる。
じりじりと鬼との距離を話していた。
「君、走りなさい。」
そう言われて俺もようやく逃げるという選択肢が復活する。
ボロボロの体と精神を無理やり保ち、走り出した。
その戦い方は、まさしく生きるための戦いという言葉が似合う。
勝とうとする気は毛頭に感じない。
本当に俺を助けてくれたようだった。
「退けー!」
短い指示で全員が一斉に逃げ出す。
鬼側も不毛な戦いだと気づいているのか、こういうことが過去何回もあったのか諦める。
まさしく俺は九死に一生を得たようだ。
最近強くなったのにこんなピンチ続きで参ってしまう。
「君は人間だろう、着いてきなさい。」
そう言われて、俺も素直についていく。
命の恩人だし、もう疑問を抱く体力すら残っていなかった。
ついていった先には集落があり更に多くの人(?)が住んでいた。
そして、奥の方に連れられて行く。
「姫様、人間を発見し保護しました。」
一番大きいと言える建物なのだろうか。
そこにいる姫、と呼ばれる人に会いに来たのだろう。
開いた先には鬼の仮面をつけた女の人が座っていた。




