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異世界で都市開発 ~はぐれ島での新生活~  作者: 里下里山
第二章 異国の開拓地編
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 目の前にいるのはバイバンさん。

 勝ちにこだわるチーフが俺と、スパーダを同時にだしてくれるのかという不安もあった。

 しかし、それは以外にもあっさりと許可がでた。


 「まあ、武器とか私たちも持つしね。

  流石にいいんじゃないー?」


 あの言葉は優しさなんかじゃ全くない。

 むしろ、こっちの方が俺たちが負ける確率が上がってしまう。

 スパーダは剣状態の時、俺と意思疎通ができる。

 でも、今声が聞こえないのはスパーダも言葉が出てこないのだろう。


 バイバンさんはこちらに臨戦態勢を見せようともしなかった。


 「悪いけど、私相手に勝ち目などないよ。

  今すぐ、降参を宣言することをおすすめする。」


 やけに落ち着き払ってバイバンさんはそう言う。

 事実、戦えない俺は声を震わせながらも言葉を返す。


 「何故、あなたほどの優秀な人がチーフなんかと。」

 「私が優秀だと!、知ったような口を聞くな小僧!」


 急にバイバンさんの表情が怒りで染まる。

 だが、瞬間的に感情を冷却して冷静に俺に対して答えをだす。


 「こほん、良かろう。

  どうせお前たちには記憶を消すか死ぬかの未来しか残っていない。

  少し、昔話でもしてあげよう。」


ーーーーーーーー


 私は、出稼ぎに中央国まで来ていた。

 まあ、それも対等な交渉ではなくてほぼ奴隷の様な扱いを受けるものだった。

 それでも、家族のために私は何とか働いていた。


 皿を洗って、土地を作って、何千個も同じものを作って、失敗して殴られて。

 それでももらえるお金は少なくて子供と嫁に回すと、自分の食べ物がない。

 そんな生活を送り続けていた。


 でも、全然それでもいいんだ。

 それでも、二人が幸せならばいいんだ。

 嫁が蒸発した時も怒りなんてなかったさ。

 そっちの方が、あいつにとって幸せだったんだろう。

 それに子供、スパーダも残ってくれていたんだから。

 私は強く強くスパーダを抱きしめた。


 それよりも仕事がなくなる方が死活問題だった。

 その日も私は首を切られてしまって何度も頭を下げたが無駄だった。

 私はただただ路頭に迷ったよ。

 これ以上仕事は見つからないかもしれない。

 そうなったら、ただでさえボロボロの家に住んで辛い思いをさせているスパーダはどうなる。

 何とか、何とかしなくては。


 私は路地裏に転がり込んだ。

 今日だけは誰にも見つけてほしくなくて、現実逃避をしたかったから。

 だがそこで目に映ったものは。

 人が殺されているところだった。


 殺しを行っていたのは普通の女の子。

 だが、返り血を全く浴びていないことから普通じゃないことはなんとなくわかった。

 私はそれを見て、魔法使いに連絡しようとする。

 が、一つ考えが思いついてしまった。


 「お、おい。

  この現場、黙って欲しかったらとにかく金を渡せ。」


 女はこちらを見る。


 「私に指図するなんて面白いね。

  でもさ、私の殺しを見てあなたは何で殺されないと思ったの?」

 「あ、えと。」

 「そもそも、こんな所にいるなんて何か大きな失敗があったんでしょ?

  それでお金がないのかな。」


 私はまさしく、無策で突っ込んでいってしまった。

 ただの馬鹿だったよ。

 だが、その後女はとある提案をする。


 「あなたに、この人の脳みそをあげよっか。

  いや、この人だけじゃないたくさんの知識を。

  その方が、あなたは私に従うべきだと理解できるでしょう。」


 結局勝てないと悟った私はわらにすがる思いでその提案に乗っかることにする。

 その後は、とんとん拍子だったよ。

 知識とたくさんの資金を持った私は今すぐ、自分の大陸に戻った。

 そこで、都市部を作り上げることで一瞬にして資金を手に入れたよ。

 私は人生の勝者になったのだ。

 

 スパーダだって私のことを尊敬してくれたし、豊かな生活を手に入れた。

 まさか、誘拐騒ぎの頭脳が他の大陸にいるとは誰も思わないだろう。

 ミミリとかいう女が来るまで作戦は完璧だったんだ。

 

ーーーーーーーー


 「どうだ、少しは同情してくれたかな。」

 

 俺はそんな話を聞いて驚きを隠しきれない。

 つまり、チーフの能力で手に入れた頭脳で都市を作っていたという事か。

 それも、自分の子供のためだけに。


 バイバンさんは愛に狂っている。

 ここまでの行動を自分の子供のためだけにやってのけたのだから。

 だが俺は、そこに一つ安心もしていた。

 

 スパーダ、聞こえるか?

 お父さん、お前のためにたくさん悪いことしちゃったみたいなんだ。

 でもさ、根っから悪い人じゃないってのは伝わってきた。

 まだ、殺しもしていないし止めるなら今しかない。

 スパーダのために行ってしまった悪なら。


 (そうだ、オイラのためにお父さんは。

  だったらオイラが何とかしなくちゃ。

  オイラたちでお父さんを止めなくちゃ!)


 剣に熱がこもる。

 それが、スパーダの決意だと気づく。


 「ったく、あんな話したら逆に熱くなっちゃうってなんであの頭でなんでわからないの?」


 実況席から小さく声が漏れる。

 ミミリは、それを聞き優しく答える。


 「バイバンさんも知っていたんですよ。

  自分が止まるためには今しかないってことを。」


 その火は今までで一番熱く、それでいていちばん優しく。

 真っ赤に真っ赤に燃え上がる。


 バイバンさんは息子を試すように手を掲げ、火の球体を作り上げていく。

 

 「もう、私はお前のことを守る必要なんてないのかな。

  もう、お前は誰よりも幸せなのかな。」


 そうやって、優しい顔になったバイバンさん。

 むしろこれが本当の顔なのだろう。


 (おとうさん、その通りだよ。

  オイラ、仲間たちに会えて本当に誰よりも幸せなんだ。

  でも、もっともっと幸せが欲しい。

  そのためにはお父さんがひつようなんだ。)


 優しく、力強い二つの声が俺にだけ聞こえる。

 この二人は本当に家族なんだな。


 「「フレイムスラッシュ!」」


 何よりも途切れない紐。

 熱く熱く伝わってくる何か。

 形式的じゃない、本当に心の底からの家族への叫びが力になり。

 俺たちの一撃は全てを包み込む。


 バイバンさんは攻撃を発動する間もなくその場に倒れこんでいた。

 俺たちはやっぱり最高の相棒だ。

 俺たちの中の火は一向に鎮火する気配を見せなかった。

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