途切れない紐
その次の日になっても、ミミリが帰ってくることはなかった。
もちろん俺も、ミミリがピンチなら助けなければいけないと思う。
俺なりに調査をしてみることにした。
ディジャバーンさんから許可をもらいやってきたのはバイバンさんの部屋だ。
ミミリとバイバンさん、二人が同時に消えたことは無関係じゃないはずだ。
バイバンさんは家族にすら、部屋に入ることを禁止していたらしい。
この部屋には何かがあるはずだ。
中に入ってみると、部屋はぐちゃぐちゃに荒らされていた。
書物や何かしらの道具が乱雑に転がっている。
ただ、落ちていた書物は小説や絵本だった。
バイバンさんがインスピレーションで建築する天才というのは本当のようだ。
建築に関する書物や、建築物の参考資料はぱっと見全くない。
だが、ここで新たな疑問が発生する。
バイバンさんはスパーダに危険だから部屋に入ると言っていた。
そんなに危ない器具とかは目に映らない普通の部屋という印象を受けたが。
もしかしたら、バイバンさんに関しても何か秘密があるのかもしれないな。
と、そこで一枚のメモ用紙が落ちていることに気付く。
俺はそのメモ用紙を拾い上げて見てみた。
そこで俺はある一つのことに気付いた。
そのメモ用紙にはアナムやレナードなどの名前が記されている。
そう、このメモ用紙はミミリのものだった。
中央国からの依頼について記されているもののようだ。
本来、メモ用紙の中の一ページだけが破れて落ちるというのは珍しい。
それも、ミミリが魔法使いの時代のものだ。
つまりこれはミミリが、何か目的があって落としたものだと推理する。
俺が何か大変なことがあった時、味方に伝えたいことは何だろう。
うーん、助けてほしいって意思とか…。
自分がこれから行く場所。
このメモで、唯一書いていた場所はヒューマ大陸の中央国。
俺は通信機で、カイゼに連絡を送る。
「おう、コウイチ久しぶりだな。」
「うん、ちょっと聞きたいんだけどさ。
中央国の方でさ、最近事件が起きてるとかない?」
「事件か、うーん。
殺人が数件、後は最近行方不明になっている人がいるな。」
「おっけ、ありがとう。
多分、俺もそっちに行くわ。」
「了解した、着いたら合流しよう。
話はその時に聞くことにする。」
俺は通信機を切る。
急いで、ディジャバーンさんの所に向かい中央国に行く意思を伝える。
「なるほど、それは行く価値があるな。
しかし、私はこの大陸にいる可能性も考慮してここに残ろう。
申し訳ないが、バイハンのことも頼めるか?」
「任せといて。」
「後から私の部下も追わせる。
とりあえず、お前に任せたぞコウイチ。」
今は、まだまだ朝と呼べる時間なためその日の内に俺は大陸を出ることにする。
移動手段は行きも使った馬車だった。
知能が高いため、行き先を伝えれば向かってくれるそうだ。
道の途中、俺の前を遮る奴がいる。
それは、ここに来てからの因縁の相手であるワニ男だった。
「よう、ここ最近よく会うな人間。」
「今回に関しては、待ち伏せされているように見えたけど。」
「もう、世間話何かしてる暇はねえんだよ。
一つだけ質問、どこに行くつもりだ。」
「一体、どこだったら困るんだ?」
ワニ男は終えに対し拳を振り下ろす。
一歩引いていなかったら致命傷じゃすまなかっただろう。
「質問してるのは俺だ。」
ワニ男は答えを聞くまでもなく襲い掛かってくる。
俺もディジャバーンさんからもらった剣で応戦する。
剣を握ると、一気に集中力が高まる感覚を覚える。
俺もディジャバーンさんのように最低限の動きで相手の攻撃を裁いた。
「おいおいおい、黙って俺様に吹っ飛ばされろや!」
段々と怒りをためていたワニ男はついにそれが爆発し、俺に大ぶりのパンチを繰り出す。
そこに生じた隙を俺は見逃さなかった。
姿勢を低くしてワニ男の足に向けて剣を振る。
お互いの攻撃が終わった後、ワニ男は声を上げながらその場に倒れこんでいた。
ディジャバーンさんが強すぎて気づきづらかったけど俺は着実に強くなっていた。
それをこの戦いで実感する。
「悪いけど、急いでるからもう行くわ。」
「メガ・ウォーター!」
俺はギリギリで反応して、剣で自分の身を守る。
だがその剣ははるか遠くに弾き飛ばされてしまった。
つまり俺は武器を持っていない、やばい状況だ。
「おい、こっちが手を抜いてやってんのに調子づきやがって。
てめえはスキルも使えない劣等種の中の劣等種だろうが。」
俺は確かに強くなった。
でも、スキルを持たない壁はあまりにも高かった。
ちくしょう、この状態じゃ逃げることもできない。
「逃げることなんて考えてないだろ?相棒。」
ワニ男と俺は声の先に視線を移す。
そこにはスパーダが立っていた。
「なあ、俺も連れて行ってくれよ。」
「ごめん、それはできないよ。」
俺はもしかしたらミミリですら飲み込まれてしまうような危険なものと対峙するかもしれない。
流石にそこにスパーダを連れていくことはできない。
「オイラ、もう覚悟を決めたんだよ。
お父さんを絶対助けるって。」
スパーダの声はやけに落ち着いている。
それこそ、本当に覚悟を決めているかのように。
「こいつを倒せたらオイラも連れて行ってくれよ。」
「何だと、クソガキ。」
ワニ男は怒りの感情に支配されていく。
「オイラの魂は相棒に捧げるよ。
チェンジウェポン。」
気づいた時には俺は剣を握っていた。
脳内に声が響き渡っている。
(コウイチももしかして、炎に適正があるのか?
やっぱりオイラの相棒だな。)
炎に適正?小指ライターのことか?
というかそれ以前に。
「スパーダの適正は炎じゃないのか?」
(そう、その中でも兵器に変身することの適正が高いのさ。
これは、いわば炎の剣だ。)
「なるほど、よくわかんないけどとりあえず力を貸してくれ。」
(それでいいよ、任せたぜ相棒!)
ワニ男はまだまだ怒りが収まらない様子だった。
「さっきからグダグダ何言ってんだ!?
もう、速攻でぶち殺してやるよ!
メガ・ウォーター!」
俺達の剣が炎を纏う。
その炎はだんだんと勢いを増していった。
火は水に弱いっていうイメージがなんとなくあるけど。
その炎は一瞬にして水を蒸発させる。
「フレイムスラッシュ!」
一瞬でワニ男は炎に包まれる。
その煙は俺たちの勝利を伝えるように高く上がった。
「オイラのこと連れてってくれるよな。」
「それは、ごめん。」
確かにすごく強いし頼りになるけど、俺は安直に許可を出せない。
「オイラ、お父さんに色々と伝えたいんだ。
こんな所で、別れなんか嫌なんだ。」
その言葉は俺の心を揺さぶる。
家族が消えてしまった絶望を考えると、胸が苦しくなる。
そして数分の説得でようやく俺はスパーダと一緒に行くことを決める。
「その代わり絶対命が第一優先だ。
約束できる?」
「もちろんだ!」
俺はスパーダを絶対に守ることを決める。
そして二人はまた走り出す。
最悪の未来を回避するために。




