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異世界で都市開発 ~はぐれ島での新生活~  作者: 里下里山
番外編1
21/64

夢散る少年

 ある辺境の村で一人の少年が生まれた。

 オペラードと名付けられた彼は髪の色がピンクで適正が感情。

 この世界では感情のスキルは法で禁止されている。

 つまりは実質、適性がないということだった。


 しかし、オペラード自身も両親もその事実を重く捕らえはしなかった。

 なぜならオペラードはその分、驚異的な学習能力を有したからである。

 頭さえよければ、適性に関係なく裕福に暮らすことができる。

 両親はそんな頭のいいオペラードのことを自慢の息子だと喜んだ。


 時は進みオペラードはどの学校を選ぶのかに悩まされた。

 中央国にある一番質のいい学習を受けられる国立の学園、多少レベルは落ちるが家に近いため両親の様子をたまに見に行ける学園。

 まあ、他にも色々な要素があってその全てがオペラードを悩ませていた。


 「母さん、どこに進学したらいいかな。」

 「私たちのことも気にしてくれてるの?

  中央国の学園、目指してみたらいいじゃない。」


 母はそう言って親身に話を聞いてくれる。

 父も俺たちにコーヒーを淹れてくれていた。

 こういう気遣いが見え隠れする両親の優しさが好きだった。


 だからそんな両親が死んでしまうなんて思わなかった。

 寝て起きたら村は壊滅していた。

 両親は俺を覆うようにして死んでいた。

 あまりにも悲惨な状態に声すら全くでない。


 しかし、外に出てしまったのが駄目だった。

 明らかにこの惨状を巻き起こした犯人と目が合ってしまう。

 

 「あーいたいた、よかったよかった。」

 「なんでこんな酷いこと…。」

 「酷い?あーこれ、おじさんが来た時には」

 「お前だろ!」


 犯人は頭を掻きながら答える。

 

 「頭いいんだっけ君、じゃあ隠しても無駄か。

  おじさんは、君のこと誘拐しに来たんだよ。

  そのスキルは珍しいからね。」


 犯人はそういうと、オペラードに手錠をかけた。

 スキルを全く持っていなかった彼は抵抗することも叶わず連れていかれる。

 ただただ悲しみと虚無感に襲われていた。


 と、犯人の前に一人の男が立つ。

 黒い髪に白いローブ。

 これが本で読んだことのある魔法使いというやつか。

 オペラードはそう納得した。


 「なあ、邪魔なんだけど。

  どいてもらってもいいかな。」

 「子供に手錠をかけて肩に抱えている大人をなぜ見過ごす。

  お前が、報告の入った男で間違いないな。」


 段々と犯人の顔は渋くなっていく。

 思えば犯人の能力も何だったのか覚えていない。

 その時は、魔法使いにナイフを突き立てた。

 でも、死んでいたのは犯人の方だった。


 何が起こったのか分からない。

 魔法使いがどんな人なのかもわからない。

 それでもオペラードにとって。

 その魔法使いは両親の仇を取って自分を助けてくれた。

 そんなかっこよくて強い魔法使いにいつの間にか強く惹かれていた。


 「お前、もう帰る場所なんかないんだろ。」


 手錠を外しながら、魔法使いは言う。

 

 「俺の所へこい。」


 そう言われてオペラードはようやく涙を流した。

 そう言われてオペラードはようやく己の道を決めた。

 帰り道、手を繋ぎながら話をする。


 「お前、名前は?」

 「オペラード、魔法使いさんは?」

 「俺?俺はそりゃ勇者だよ。」

 「っぷ、なにそれ。」

 「あ、笑ったろ。

  お前、助けてもらっておいてなー。」

 「ごめん、ありがとう最高の勇者さん。」

 「どういたしまして、ってお前可愛いやつだな。」


 そういって勇者は頭をグシャグシャする。

 そうしてるうちにいつの間にかたどり着いていた家に一歩踏み込む。


 「おーい、ヒューロ。

  すまんけど子供連れてきちまった。」

 「ええ?、全く君はお人よしなんだから。

  座って待ってて、こいつと話がしたい。」


 そう言って連れていかれる勇者。

 数分後出てきた二人は優しくオペラードを迎えてくれた。

 そこからはヒューロの家での生活が始まった。

 勇者は忙しくて帰ってくることの方が全然少なかった。

 だからほとんど、ヒューロとオペラードの二人暮らしだったことになる。


 そこからオペラードは毎日とにかく勉強して、筋トレしてヒューロにたくさん褒められたけどそれでも限界まで色々やって。

 そうするのは魔法使いになりたいという夢のためだけだった。

 なんだかんだ勇者もヒューロもその夢を応援してくれた。


 その後は、とんとん拍子で進んでいった。

 中央国の魔法学校には首席で入学した。

 スキルに関しても勇者に身体強化を教え込まれていた。

 適正がなくても、オペラードは学園でトップクラスの位置に君臨した。

 

 そんなオペラードのことを気持ちよく思わなかった奴もいた。

 でも、勇者に憧れたオペラードはそんな人にも手を差し伸べていく。

 いつの間にか、友達もたくさん出来ていた。

 

 寮生活だったため、二人に会うことは極端に減った。

 それでも、手紙が届いたから寂しくはなかった。


 オペラードはそうして、魔法使いになった。

 たくさんいる友達とチームを組んで、頭の良さから事件の解決数は大きく伸びた。

 その日も、あと一歩のところまで悪を追いつめていた。


 オペラードは足に違和感を感じていたが、この日運悪くそれが痛みとなってでた。

 ついてきてくれていたサポートのメンバーも気遣ってはくれていたが、オペラードも意地を張っていたように思う。

 その痛みを我慢して、敵と向き合っていた。


 悪とは卑劣なものだ、そんなのはわかっている。

 だけどその日は痛みが勝って、敵がサポートメンバーを狙ったことに気付くのが遅れた。

 その時、感情のスキルで味方を操り攻撃を避けさせた。

 それだけだったんだ。


 オペラードの魔法使いの資格がはく奪される。

 仲間たちは今までにないほどの涙を流していた。

 オペラードは絶望で涙すら零れない。


 なんとか、フィーロの家に帰ったオペラードは数か月の間引きこもった。

 しかし、ずっとそうしてるわけにも行かずフィーロの研究所で働くことになった。

 何をしていても、同じ言葉が頭を反復する。


 俺はこの力で仲間を助けただけだ。

 悪いのは俺じゃなくて世界である。と。


 いつの間にかオペラードの行動原理は世界への復讐になっていたのだ。

 フィーロにもそれが見えていたのだろう。

 

 「オペラード、お前何かやばいことを考えていないだろうな。

  厳しいことを言うが、お前が犯罪をしたときは僕はお前を他人とみるぞ。」

 「そんなこと、するわけがないじゃないですか。」


 オペラードは初めて嘘をついた。

 

 

 


 あれから本当に色々なことがあったものだ。

 ギルティへの接触手段をみつけ、俺の同胞ともいえる女を二人見つけた。

 欲望や復讐に燃え、ついにはフィーロさんの仲間にさえ手をかけようとした。

 そして己の力で己の身を滅ぼしたんだ。

 最後に勇者さんとかフィーロさんに会いたかった。


 天国に行くにはまだ時間があるようで、島の中心に一人の男を見つける。

 一番見てきたであろうその男は他の仲間に見られないように部屋で声を出して泣いていた。

 天才としてその名を轟かせたオペラード、彼は最後にこう語る。


 「俺って、本当に馬鹿だな。」


 久しぶりにはぐれ島に雨が降った。



 

 


 

  

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