17話 無力罪
その背中に花火のような模様の火傷を負ってしまったフードの男。
彼は風を纏い、リオを北上していた。
自分の居場所に戻るためだ。
「う、ふぅ……ふぅ……痛むな」
膿が滲んだ生傷は、風に煽られ激痛を生む。
だからと言って、空中で泣く訳にもいかない。
なぜなら彼にとって弱さとは罪だからだ。
「これじゃあ、恥ずかしくて顔向けできない」
彼は必ずイオを引き渡すと決意したのだ。あの人のために尽くすと誓ったのだ。
しかし、今回の敗戦により自分への期待を無下にしてしまった。その悔しさが今は心にズキズキと滲みてくる。
だから、彼はイオを殺すことを再び心の中で深く誓った。
「……ん?」
そうやって空を舞っている最中、不幸にも彼の視界に二人の男女が映ってしまったのは後の話だ。
◆◆◆
火がまだ燻っている王城のロビーにて。
シロンとシリウスは互いの健闘を称え合っていた。
「本当にすごかったです!」
「いや、シリウスこそ……その年齢でその火力は天才的だよ。ボクより全然すごい」
「そ、そうですか? えへへ……」
シロンはシリウスを天才的と称したが、それは彼女自身も同じだ。若き二人の火魔法使いがいたからこそイオの囮作戦がうまくいったのだ。
どちらも同じくらい強かった。
「二人ともありがとな」
その二人を傍目から眺めていたイオ。
彼は楽しげに語り合う彼女らと違い、厳しい現実を目の当たりにしていた。
(やっぱり才能の差ってどの世界でもあるんだな。俺一人じゃまだ何も……)
そう、彼が使えるのは土と木の魔法だけ。
お世辞にも戦闘に向いているとは言えない。土は防御に、そして木は回復に適した属性なのだ。
そんな彼があのフードの男のような凶悪な敵と対面した時、満足に戦える聞かれると―――
(こんなんじゃなかったらなぁ……マイアさんだってすぐに倒せたし……ブラキ―――)
彼が何かを思い出そうとした時、広間に突如として悲鳴が響き渡った。
己の無力に嘆く男の悲痛な叫びがその場にいた全員の耳をつんざいたのだった。
「ぐっ!? あぁぁぁぁっ!!!!」
「どうしたの、イオ君!?」
「お、落ち着いてっ!」
脳味噌の奥に眠る何かが、内側から槍で突いてくるような感覚を味わった。
何なのだろうか、この感覚は。
何かいけないことでも考えてしまったのか。
ただ、あの存在を思い出そうとしただけなのに。
「あぁぁぁぁ―――」
夜を彷徨う亡霊のような呻き声を最後に、彼の記憶は途切れてしまった。
どうやら彼の本当の傷が癒えるのは、まだまだ先の話らしい。




