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A lot of stars  作者: 赤秋の寒天男
第三章 無限の彼方
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13話 朝と皆

3000PVありがとうございます

 太陽がだんだんと上り、王城を満たしていた涼しい空気が温かくなってきた頃。ボサボサ髪のシリウスが広間にやってきた。

 それを迎え入れたのは、一足先に起き出して暇そうにしていたイオだった。


「おはよう……です」

「ああ、おはよう。もうそんな時間か」

「はい……あの、髪を洗ってくるのでその間にシロンさんを起こしててください。何度呼んでも反応がなくって……」

「分かった」


 そう言い残したシリウスは、まだ眠気が晴れないのかフラフラと部屋を出ていった。

 ここで彼女の頼み事を聞いたイオは「シロンは相変わらずだな」と謎の安心感を覚えた。アクエリアスでもそうだったように彼女が寝惚けていたからだ。

 彼もシリウスに続くようにして部屋から出て、ぐうすかイビキを立てているであろうシロンの所へ向かった。


「うんしょ……」


 そして、長々とした石階段を登り、誰もいない廊下を歩いて、ふとそこにある窓から外を眺めた。

 ちょうど視線をやった時、大小様々で色とりどりな植物が絡み合う自然風景の中に、少しばかり異質な青色を見つけたからである。


 それは泉だ。

 しばらく泉に視線を向けてボーッとしていると、次は白色が視界に飛び込んできた。度重なる鮮やかな色の変化に、イオはついつい見惚れてしまう。


 どうやら彼は幸運にも、真っ白な体毛のシリウスが水浴びをしている瞬間に遭遇したらしかった。

 しかも、あちらはこちらに気付いていない。まさかの眺め放題である。だが彼にやましい気持ちは一切なかった。

 ただただ彼女が美しく思えて、イオはそこから目を離せなかっただけ。


「綺麗だなぁ」


 シリウスは水を掬って口に運んだ後、もっと多くの水を掬って、それらを豪快に自分の頭にかけた。

 どうでもいい日常の一コマではあるが、彼女がそれをやると何倍もの価値があるように思えた。

 まるで絵画のようである。

 あるいは写真でもいい。プロが何時間もかけて撮ったような素晴らしい写真、その一枚一枚。


(っ!? 俺と目が合ったか……?)


 そこでシリウスはこちら側に振り向いた。

 何者かの視線を察してか、それとも気まぐれか。王城の方へ顔を向けてきたのだった。

 いけない、と反射的に体を陰に隠した。彼は逃げるように窓から離れたのだった。


 まあ、それにしても見惚れている場合じゃない。

 そうだ、彼には目的があるのだ。

 しばらく歩いていると目的地に辿り着いた。

 石の壁に木の扉。季節が夏じゃなかったら思わずクレームを入れたくなるほどの質素な造りの部屋。

 冬場なら寒すぎて凍死していただろう。


「おーい、起きろー」


 失礼なことに、わざわざ貸与してもらった部屋に文句を浮かべつつ、イオは部屋の中にいるシロンに何度か呼び掛けたのだっま。

 そして、その呼び掛けに彼女が応えてくれなかったことを確認すると「果たして自分のやっていることに意味はあるのか」と疑問を感じずにはいられなかった。

 しばらく待っても起きないので、仕方なく扉を開けることを試みた。もう関係は長いのだから、勝手に部屋に入ったくらいで怒るような仲ではないだろう。

 彼は勝手にそう思った。


「入るぞー、いいなー? って、鍵かかってる」


 そりゃそうだ。

 ここでイオは思い付いた、とある魔法の便利な利用方法に。


 瞬間的に思い立った方法を実践すべく、イオは扉の金具が埋まっている木の部分を手でなぞり、順序良く魔力を注入していった。

 そうすると、どうだろうか。

 なんと木材はあっという間に歪んで、鍵穴が鍵穴としての役割を果たせないようになってしまったではないか。


 彼の狙い通り、これで出入りし放題だ。

 そして、更に『耳』の精霊を呼び出して、自分が発する音の全てをシロンの耳に集中させてみた。こうすればどれだけ大きな声で騒いでもバレないし迷惑もかからない。

 それに大声で彼女に呼び掛けられると考えた。


「すぅ……お・き・ろ!!!!」

「うわぁいっ!? い、イオ君!?」

「起きろ、朝だぞ」

「あ、う、うん……」


 幸せそうな表情で眠っている彼女を叩き起こすという行為は、イオに一抹の躊躇を抱かせた。

 しかし許して欲しい。彼はやらなければならないことをやる時は躊躇わないタイプなのだ。

 そうして、服装を整えたシロンと共に王城の廊下へ歩み出たのだった。


「俺がこの世界に来る前は誰がお前を起こしてたんだ? よく仕事に遅れてたんじゃないか?」

「あー、色んな人が起こしてくれてたよ……ところで君はどうやって部屋に入ってきたの?」

「…………」

「部屋の扉、壊れてたみたいだけど」

「……さあ」


 静かで幸せな朝の時間は、自分のやった犯罪行為に対する弁明に奪われてしまった。

 どうやらシロンとイオの親密度は、まだまだ足りていなかったらしい。彼女の冷たい視線がイオに突き刺さるのだった。

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