12話 無音の聖域
楽しい時間は、いずれ終わりを迎える。
イオはシリウスたちと別れて、そのまま貸し与えられた自室へトボトボと戻ったのだった。
夜は孤独だった。
なぜか『不死』の力により一切の睡眠を必要としなくなったイオ。そんな彼とは違い、他の者たちは眠らなければならないからだ。
一人で渋々起きていた。
「暇過ぎて死にそうだ。いや、死なないけど」
そんな彼にも、ジョークを言う余裕はあった。
適当なことを言って自分の寂しさを有耶無耶にしており、それでも寂しかったので精霊術を行使して森の生き物たちの鳴き声に耳を傾けていた。
ついでに『耳』の効果範囲を探る目的もあった。
「……ってか、昼間は気付かなかったけど、この辺には色んな動物がいるみたいだな」
彼の耳に飛び込むのは、鋭い牙をカチカチと鳴らす音や厚い体毛を舐め上げる音、それに肉を食む音など多種多様だった。
しかし、そこで一つだけ不可解な音を感知した。
「ノイズか……? 俺の力が足りてないのか、それとも範囲に入ってないのか」
彼は、とある点を中心に音が聞こえなくなる球状の領域があることに気付いた。
その領域はちょうどゲミンガたちがいる街の外れにあるようだった。洞窟の奥だろうか。
いずれにせよ報告しておかなければ。もし精霊術を阻む自然の要塞があるなら、それは彼らの調査の邪魔になってしまう。
「……まあ、明日の朝に伝えとくか」
しかし、そこでイオは特に気に掛けることもせずに自分の意識を手放した。確かに眠れなくても、ボーッとしたい時はある。
彼は休憩したいという欲求を晴らすかのように、無理に布団にくるまったのだった。
精霊への集中状態を手放した途端、彼の耳からあらゆる音が遠ざかり、やがて世界を静寂が包み込んだのだ。
夜の闇は暗く、濃くなっていった。




