6話 支配者
ユニーク数が1000を突破しました
それと評価ポイントも少しずつですが増えています
ありがとうございます
城内は毅然とした空気に包まれていた。
下手に手足を動かせないほどの張り詰めた、いわゆる王の威圧のようなものを感じた。
その人柄などは聞かされていないが、たぶんバニローみたいなのと一緒だと思わない方が良いだろう。
「何度来ても緊張します……うぅ、私はここで待ってますから」
シリウスはウォルフに一礼した後、イオたちに目配せをして立ち去った。使者としての役割はここで終わりらしい。
その後、ウォルフが振り返って鎌首をもたげた。
目や口こそないが、彼女の言いたいことが何となく分かってしまうのは不思議だ。
そして何かを促すように金属製の首を王城の奥へ向け、鎖の腹を地面に擦り、重りの付いた尾を引きずりながら先頭を進んだ。
改めて見てみると、彼女の動きは蛇そのもの。恐ろしくも美しい動きだった。
「分かっていますでしょうが、無礼な行動はお控えなさって。それとも、わざわざ言い付けるのも失礼でしょうか?」
「いえ、そんなことは」
「調査に来ただけなんで別に変な事はしません」
「アタシも同じだ。面倒事は嫌だな」
「ぼ、ボクもです」
ゲミンガとスピカは、そこまで緊張していないように見えた。いくらイオたちより年上と言っても、そこまで年を重ねてはいないはずだ。
しかし、今は年齢不相応に肝が座っている。
しばらく歩くと、鉄の鎧を被った兵士、そして比較的軽装な魔法を使う兵士たちが待ち構える扉に着いた。
ウォルフが首をクイッと持ち上げて合図をすると、その兵士たちが彼女の代わりに大きな扉を押し開けた。
どうやら、彼らにとって鎖鎌との意思疎通はお手の物らしい。
「うお……っ」
その扉の間から光が溢れてきて、イオは思わず目を細める。
そして、次に目を開いた時には既に王がいた。王、支配者、立派な混血の男が玉座に構えていた。
顔や体は普通の男性と変わらないが、立派なたてがみが彼の頭を覆っており、更によく見ると手の先から太い爪が生えており、くすんだ金色と濁った銀色の体毛が手足を覆っているのが分かった。
彼はまさに獅子だ。
「…………」
王はこちらを真っ直ぐな視線で捉え、片時も瞬きをしなかった。
その豪然たる振る舞いに、しばらく愕然としていたイオたちだったが、四人はウォルフに促されて彼の前に片膝をつき、頭を垂れて敵意がないことを示した。
それからしばらくして、彼は口を開いた。
「名を言え」
「はっ。リブラ魔法管理局の『目』、ゲミ―――」
「いいや、貴様らの名はよく知っている。我が聞いているのは端の二人だ」
端の二人とはイオとシロンのことだ。
急に自己紹介の順番が回ってきて二人の心臓は飛び上がってしまった。
「り、リブラ魔法管理局から来ました。一般職員のシロンです」
「……イオです」
「イオ、か」
何で俺の名前だけ復唱すんだよ、と彼は心の中で叫んだ。せっかく目立たないようにシロンの後に自己紹介したのに。
ふと隣を見てみると、表情を緩ませているシロンが見えた。王のヘイトがイオに向き、彼女は慢心しているようだった。
「しかと耳に入れた……では、我からも」
王はゆっくりと玉座から立ち上がり、予想よりも遥かに大柄で筋肉質な体を誇示してきた。
肩幅はイオの数倍もあるように見え、身長も比べ物にならないと感じた。二メートルはゆうに越しているのではないか。
まあ、これも全て王の威圧による錯視なのかもしれないが。
「我はリオを統べる者、サムニブ・レグルス。見て分かる通り獅子の混血だ」
レグルスは両手を広げて見せた。
それにどんな意味があるのかは分からないが、少しも歯向かえないような強大な力を示されている気分だった。
そして、玉座に座り直した王が放った一言にイオの意識が蹂躙されることになる。
「戦え。イオよ、貴様も混血なのだろう? 戦って力を見せてみよ」
「は……」
イオは、自分の体から力が抜けるのを感じた。
今の言葉が聞き間違いでないのなら、自分は確実に捻り潰されると思い、その顔を真っ白に染め上げたのだった。




