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A lot of stars  作者: 赤秋の寒天男
第一章 夕闇の先
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5話 泉と太陽

 夜の闇が一層濃くなる頃。

 食堂を出た二つの影は、とある場所へ向かっていた。


「実はこの町には観光名所があってね」


 どこか自慢気な態度で、その少女―――――黄金の髪に深紅の瞳を持った美少女であるシロンが語り始める。


「聞いただけだと、それって完全に心霊スポットだと思うんだが」

「そんなことないってば」


 シロンと並ぶのは、茶髪に緑眼の少年イオだ。


 これから向かう先は、彼にとって良い印象を受ける場所ではないようだ。

 というのも―――――


「泉に顔を突っ込むんだろ? 幽霊か何かに引きずり込まれないか心配なんだが。しかも、詳細は行けば分かる、って怪し過ぎる」

「そこに行けば、有益な情報を得られるかもしれないよ? もしそうなれば、君はボクに感謝してもしきれないほどの恩を感じて、泣きながら―――――」

「そ、そんなに凄い場所なのか? それだけ言うなら信じなくもないが……」


 軽口を叩くシロンに対して、イオは何かと不安を隠せない。何せ、その泉は暗い林の中にあって、条件を満たす者が近づくと淡い光を放ち、その者に何かを見せるらしい。

 何を見せるのかについての説明は一切無かった。


「で、その『何か』って言うのは?」

「それはね……その人のsごっほぉえぇっ!」

「お、おい! 大丈夫か!? 喉に鶏肉を詰まらせたか!?」

「……ああ、もう大丈夫…………やっぱりダメかぁ」

(どゆこと?)


 謎の発作を見せ、危うく鶏を吐き戻しそうになったシロン。彼女がゆらりと歩きつつ、ゆっくりと呼吸を整えたタイミングでその泉に到着した。木々に囲まれた泉だった。

 かなり臭く、イオの好奇心をごっそり削ってくる。

 その畔に注意書きの看板が立ててあるみたいだが、案の定イオには読めない。


 彼は案内されるがまま、泉に近付いていった。


「ほら、そこに立ってみて」

「お、おう」


 イオは恐る恐る泉へ近づく。

 と言うか、夜の林は想像以上に人間の恐怖を駆り立てる。まるで、葉の擦れ合う音が愚者を笑い者にしているようだ。

 そんな時。


「うわっ! 光った!」


 その泉が輝きだしたのは突然だった。

 光は眩しすぎる訳ではないが、決して弱々しい訳でもない。そこから不気味な生命力を感じた。


「なるほど、ね」


 その光を確認してシロンはそう溢した。何かを諦めたような声色だ。

 咄嗟に、イオがその真意を探ろうとするが、その前に何かに押された。泉の方へ押し出されたのだった。


「まあ、頑張ってね。良薬は口に苦しって言うでしょ?」

「は? 何言って……っ!? 押すなよ!」


 シロンの方を振り返った瞬間、イオは足元の石に足を引っかけ、背中から泉にダイブする姿勢になった。

 瞬時に、何かに掴まろうとして手を振るも、ただ空中を掻くだけになってしまった。


「ボクもなるべく頑張るよ」

「おい、助け――――」


 シロンの顔がイオの瞳に映ったのを最後に、彼の意識は水底へ押し込められていった。

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