3話 新天地にて骨休め
誤字訂正ありがとうございました
自分では見なおす時間を確保できないため助かります
心優しい新聞記者のマイアに懇切丁寧に案内してもらったのは、宿屋の二階の一番奥の部屋。
イオとシロンは失礼のないように慎重にその部屋に入らせてもらったのだった。
「あっ、思ったより広いんですね」
(ボクたちが借りる予定だった部屋より大きい……)
「でしょ~? 私の同僚がさぁ~でっかい部屋でゆったり過ごしたいって言うから、わざわざここを予約したのに……そしたらね、その子は病気で来られなくなっちゃって、私は一人で寂しく仕事しに来たって訳なの。いや~賑やかになって何より!」
マイアはどうやら上機嫌みたい。
鼻歌を歌ったり、そわそわ歩き回ったり、二人の方をチラチラ見たりしている。
悪く言えば、幼児のように落ち着きがない。
「なあ、シロン――――」
イオはシロンを部屋の角に呼び寄せて、マイアに声を聞かれないように会話を始めた。
「――――本当に大丈夫なのか?」
「あの人のこと?」
「ああ、まだこの世界に来たばっかりで、よく分かってないことだらけなんだが……でも、こういうのって普通は断るだろ?」
「んー……優しそうだし、きっと大丈夫だよ」
「いや、あの振る舞いだって嘘の可能性も……」
「でも、ボクらの手持ちだと一週間分の旅費に届かないんだよ? リブラに帰らなきゃいけなくなったらどうするの?」
「……それもそうか」
会話の終わりに、二人はマイアの方に振り返った。
彼女は相変わらずの笑顔でこちらを見ている。その瞳は曇りなく、尊さを感じるほどに美しかった。
やはり悪い人ではなさそうだが。
「あ、そうだ! 私ね、取材でほとんどここにいないから、部屋で自由にしてて良いよ。盗まれて困るものなんて持ち合わせてないし」
「色々とありがとうございます」
「いいよいいよ! お金を払った分だけしっかり部屋を使い込んであげないとね。何だかもったいない感じがするでしょ?」
「そ、そうっすね……」
その後、二人は荷物をベッドのそばに置いて、そこに腰を落ち着けた。
もちろん部屋には二つのベッドがあるので、イオとシロンはそれぞれ別のものを確保した。
これは当然だ。年頃の男女は枕を共にしない。
「私はあんまり寝ないから、ベッドも一つずつ使っていいよ。窓側か扉側か……って既にガッツリ占拠してあるね」
「すみません……と言うか、そっちの机がすごいことになってますね」
この部屋には机が一つだけ窓の近くにあるのだが、そこは彼女のメモやら紙の束やらで一杯だった。
やはり仕事柄か、そういう物は溜まりがちなのだろうか。
どこからどう見てもクシャクシャの紙屑にしか見えないのだが、マイアからしたら大切な資料なのだろうか。
「あはは……片付けるのが苦手で」
そんなことはなかった。
それどころか、よく見たら書類の間に食べかけのビーフジャーキーのようなものや、まだ湿っている飲み物のビンが挟まっていた。
残念系の美人さんであったか。
「あ、そうだ……ボクたちはこれからお昼ごはんを食べに行くんですけど、一緒に来ますか?」
「外食……? ああ、いっつも片手間で済ませてたからそんな感覚忘れてたよ~あはは……そうだよね、皆でワイワイ食べたいよね」
(異世界にもこんな人いるんだな……)
マイアは自分の腕を箒にして書類を押し流し、それらを自分の鞄に流し入れた。
そして、イオは着ていた上着を脱いで、シロンは洗面所で顔を洗った。
三人がそれぞれ準備を整えて、いざ昼食を求めて外の世界へと繰り出したのだった。




