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A lot of stars  作者: 赤秋の寒天男
第一章 夕闇の先
25/465

25話 壁

 シロンの作り出した火球はとても強大で、イオの皮膚はジリジリと焼けるような熱さを感じ取った。

 今すぐにでも逃げ出したい気分だ。


「おま……っ、マジでやりやがったなぁっ!?」


 しかも大きいだけでなく、ある程度の速さもあるのが厄介。逃げようとしても呑み込まれるのは必然と言える。

 だから、イオは火球に呑まれる寸前にそれを横転で回避した。身のこなしは華麗ではなかったが、避けられただけ十分だろう。


「逃げてばかりじゃダメだよ! ほらもう一回!」

「マジで死ぬって! マジで死ぬぅ!」


 汗を垂らしながら必死に避け続けるイオを見ても、シロンは攻撃の手を緩めなかった。

 どうやら本気で彼を追い詰めるつもりのようだ。

 真摯に訓練に向き合ってくれるのは嬉しいが、正直ありがた迷惑な気もする。

 まあ、訓練の依頼者の分際でそんなことは言えないが。


「イオ君! 怖いことから目を背けるのは楽だけど、一回でも向き合ってみて! 意外と勝てる相手かもしれないよ!」

「勝てる訳ねぇし! ってか死にたくねぇ! 早く止めてくれえっ!」

「ほら! 体の内側に意識を集中させてみて! そして意識を土に移す! はい!」


 シロンが焦らすようにして言った。

 しかし、イオはもう焦りで頭がパニック状態になっている。

 だから、判断能力が少しだけ鈍った。


(こうなったらヤケクソだ……っ!)


 気でも狂ったか、そこでイオは覚悟を決めた。どうせ死んでも生き返るから、と諦めに近い覚悟をその身に宿したのだった。

  心の中の恐怖を押し殺して、シロンの火球に真っ正面から立ち向かった。


「これで死んだら……絶対に許さねぇからなぁぁぁぁっ!!!!」


 熱いエネルギーの塊にぶつかる直前、イオは目を閉じて絶叫した。

 そして腕を振り上げて、意識を集中させるイメージを浮かべ、それをそのまま地面に叩き落とした。

 体の中に眠るパワーを、土魔法として顕現させようとしたのだった。


「どうにかなれぇぇぇぇっ!!!!」


 耳元で火がバチバチと滾る音が聞こえた。

 イオはそこで自身の三度目の死を予感した。


 しかし、いくら待っても自分が燃やし尽くされるはなかった。なぜか死ななかった。


(あれ……?)


 もしかして、いつの間にか死んだのか。

 そう思い、恐る恐る目を開くと、目前に大きな土壁がそびえ立っているのに気付いた。

 四、五メートルはあるだろうか、そんな見上げるほどの大きな壁が、火球の威力を押し止めることに成功していたのだ。

 もしかしてこれがイオの初めての――――


「…………」

「やったねイオ君! おめでとう! ボク嬉しいよ!」

「えっ、これ俺の魔法?」

「そうだよ! 立派な土の魔法! これ君がやったんだよ!」


 それから数秒間、イオは瞬きを繰り返し、ようやく状況を理解した。

 そして、彼はため息を吐いてその場に倒れるように座り込んだ後、シロンに向けて言った。


「お前マジでさぁ……っ、死ぬかと思ったわ!」

「えへへ、ごめーんね」

「えへへ、じゃねぇよ。マジで許さねぇからなぁ!?」

「ごめんなさいごめんなさいっ!」


 イオの怒号とシロンの叫び声、二人の声が空っぽの中庭に響き渡った。


 どうやら初めての魔法訓練は成功に終わったようだった。

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