24話 魔法の練習
やっとこさ500PV達成しました
ドロフによる捜査が行われた次の日。
イオはシロンに連れられて、管理局の中庭に来ていた。職員たちは仕事場に滞在しているため、そこにあまり人はいなかった。中庭は吹き抜けになっていて風通しが良く、昨晩ずっと襲撃に怯えながら起きていたイオにとって、この場所はとても居心地が良かった。
「じゃあ早速……俺に魔法の使い方を教えてくれ!」
「一体どうしたのさ」
「いや、襲われた時に魔法が使えたら便利かなって」
「ふーん、まあ良いけど」
イオは既に二度も死んでいる。普通の人間ならとっくにゲームオーバーだ。
つまり何が言いたいのかというと、イオは力を付ける必要があるのだ。自衛しなければ、また死んでしまう。
そこで注目したのが魔法。この世界に存在する力だ。
イオはなぜか失われた魔法属性を扱えるので、それらを利用しない手はない。せっかくなら限界まで利用してやろう。
しかし、簡単に進む話でもないのが厄介だ。
「でも、イオ君と同じ魔法を使える人はいないよ? 誰が教えるの?」
そう、失われたが故に失伝魔法を教えられる人間が一人もいないのだ。様々な属性を操るアークトゥルスであっても、木属性と土属性に関しては素人レベルに留まる。
「いいからいいから! 仕上げは自分でやるからさ! きっかけだけでも教えてくれよ! なぁ?」
スタートラインに立つことを諦めるようであれば、まず刺客の餌食になることからは逃れられない。
つまり、イオには諦めるという選択肢が用意されていないのだ。どうしても魔法を使えるようにならなければならない。
だからこそ、今こうして、仕事を休止してシロンに教えを請いている。
「……しょうがないなぁ。まあ、そこまで言うならボクもやれるだけやってみるよ」
「ホントか!? よっしゃあっ!」
「じゃあ始めに、自分の体の内側に意識を集中させてみて。それが基本だから」
「こ、こうか……?」
イオは言われるがままに、腹部に力を入れてみた。
しかし、特に何も感じない。代わりに何かが出てきそう。やり方が悪かったか。
「クソ……コツが掴めねぇや」
「そう? もう一回腹筋に力を込める感じでやってみて、ほら!」
そう言って、急にシロンはイオの腹に触った。
突然のボディタッチにイオは狼狽した。
「ふっ!? きゅ、急に触わらないでくれますー?」
「はいはい力入れるー。ほらほら」
「ぐっ……」
どうやっても魔法を使えるイメージが湧かない。やはりイオにはセンスがないのだろうか。彼は無性に悲しくなってきた。いくらイオが凡庸な人間だからと言っても、魔法くらいはスムーズに使えても良いではないか。そう思った。
そうやってイオが四苦八苦していたところ、シロンがある提案をしてきた。
「うーん、これはあんまりやりたくなかったんだけど……イオ君、自分が初めて魔法を使った時のことを覚えてる? それを再現しようと思うんだ」
「それって、ウミウシに追われてた時か?」
「そうだよ。イオ君がボクを助けてくれた時だね。それで、人は危険な状況に陥ったら、防御反応から無意識の内に魔法を使えるようになるんだ。まあ、イオ君の場合はその……死んだ後に発動する場合が多いんだろうけど……」
「もう一回危ない目に遭遇してこいってか? 俺は嫌だぞ。他の方法はないのか?」
「そうするしかないよ。で、提案なんだけど――――」
シロンが申し訳なさそうにイオを見た。もじもじと上半身を揺らし、可愛らしげに振る舞って見せた。
それで提案とは何なのだろうか。痛くなければ良いのだが。
そんなことを考えている時、彼女は予想外の行動を取ってきた。
「ねえ、ボクの炎を防いでみてよ。イオ君って土魔法を使えるんだよね? 君の防御本能を刺激してあげる!」
そう言って、シロンはイオから数歩だけ離れた。そして、両手から真っ赤に燃え盛る炎を繰り出して、大きな火球を作って見せた。
やばい、普通に死ぬのだが。
「嘘だろ!? 無理だぞこんなの!」
「やってみなきゃ……分かんないでしょ!」
火球の熱はその勢いを落とすことなく、ゆっくりとイオいる方向へ襲来したのだった。




