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A lot of stars  作者: 赤秋の寒天男
第一章 夕闇の先
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20話 砦はすぐ近くに

「――――そう言えば、俺が靄に飲まれた時に……」


 イオは療養室のベッドの上で、先程の襲撃のことをできるだけ多く思い出そうとしていた。


「えっと、なぜか土が爆発して……」

「その話ならば、君は魔法属性を調べておったじゃろ?」

「それが何か……?」

「その時の水晶の色から、使える魔法属性が分かるはずじゃぞ」

「あ~……確か茶色と緑色が混ざってて、何だかパッとしない色でした。水晶の調子が悪かったんですかね?」

「それは本当かね?」


 アークトゥルスはいきなり困惑の表情を浮かべた。

 一体なぜだろう。イオは質問に答えただけなのだが。


「全く、君の体はどうなっておるのじゃ……」

「あはは……今回も傷が治っちゃいまして」

「そうではない。君の魔法属性の話じゃ」


 彼は自分の顔を手で覆い、ゆっくりとイオのベッドに腰をかけた。

 そして、そのまま静かに言葉を紡ぎ始めた。


「話したじゃろ? 大昔に七人の魔法使いが殺されたことを」

「何となく覚えてますけど……」

「話を聞き流しつつ、思い出したまえ。大昔、七つの魔法属性が存在しておった。その内の二つが迫害により失われた、と。愚者共の身勝手な行為により、木と土の魔法が失われた、と。それはちょうど、君の言う茶色と緑色ではないか」


 彼は語尾に力を込めつつ、視線を床からイオに戻し、更にイオの肩を掴んで言った。

 瞳は真剣そのもので、いかにも深刻な表情をしていた。


「君は何者じゃ? 君は、君自身が気付かないような多くの問題を抱えておる。放っておけない危険な存在、云わば爆弾のような人間である。先の土の爆発音は街の方にも届いたじゃろう。舞い上がった土煙も、既に一般市民に見られておるかもしれん。もう君の存在をひた隠すことは、そろそろ限界を迎えようとしておる」


 アークトゥルスの目がカッと見開かれた。

 その灰色の瞳が、イオの緑色の瞳を捉えていた。


「……何か隠していることはないのかね? あるなら是非とも聞かせてくれ」


 二人の間に妙な間が生まれた。イオの頬を汗が伝い、彼の固い握り拳に滴り落ちた。

 当然だが、彼は自分の魔法属性の由来を知らない。だから、答えられることは何もないのだ。

 しかし、イオはあえて言葉を濁すことにした。


「そんなことより、どうやって犯人を絞り込むんですか?」


 アークトゥルスは、まだイオの出自が気になっている模様。まだ心が休まらない時に、デリカシーのない疑問を次々にぶつけてくる。

 だが、無知な点についてはイオも同じだ。


 次はいつ襲われるのか気が気でない。

 管理局の職員一人一人に徹底的に尋問を行いたい気分だ。

 もしもあの時、イオが土に触れていなかったら、彼の魔法が発動していなかったら、どこかへ連れ去られていたかもしれない。それか、その場でバラバラにされていたかもしれない。

 とにかく、自分のことが全く分からないのだ。

 無知であればあるほど、邪推が増え、ストレスが増していくものだ。


「索敵に長けた能力を持った者が、偶然この街の近くまで来ておるらしい。彼女を呼びつけるつもりじゃ」

「そう……ですか」

「それから、君は自室で眠らんのが良いかもしれんな。どうじゃ、局長室を特別に貸してやろうか。その部屋を信頼の置ける我が子らに守らせよう」

「え、お子さんがいらっしゃるんですね」

「血は繋がっておらんよ。十数年前まで孤児じゃった子らを集めて、ひっそりと魔法を教えとるだけじゃ。まあ、親子以上の固い絆で結ばれておるがね」

「へぇ~」


 そうして、襲撃後の情報共有を終えたのだった。

 その数時間後に、素早く管理局長室へ護送されたイオだった。

 装飾が施された両開きの扉の前で、とある二人の男女が待ち構えていた。

 二人は雑談で時間を潰していたようだが、アークトゥルスの気配に気付くと背筋を正した。


「ほら、二人とも挨拶を」

「どうもォ、カナンと申します」

「よお! アタシはスピカだ! よろしくな!」

「は、初めまして……イオです」


 高らかにカナンと自己紹介した男。

 背はかなり高く、顔が整っている美青年だった。

 髪はイオが見慣れている黒色で、襟足が肩よりも長く伸びていた。瞳の色も同じく黒色だ。

 それから、長袖に長ズボンを着用しており、ハイネックのシャツを着ていた。

 だから、素肌が顔を除いてほとんど見えていない状況だ。


 朗らかにスピカと自己紹介した女。

 彼女は、女性にしては背が高い方で、スコルピイやブラキウムよりも高い位置に顔があった。

 元中学生のイオの顔の前に、丁度胸が来るくらいの身長だった。

 そして、髪は綺麗な金髪で、短くまとめられている。瞳は青く透き通っていた。

 シンプルな服の上に長い丈の白衣を着込んでいたので、背の高さがより強調されていた。


「アークトゥルスさん……失礼ですけど、この二人は本当に信頼できますよね?」

「もちろんだとも。誇り高き我が子の二人じゃ。いいか二人とも、何人足りとも局長室への侵入を許してはならんぞ。犯人は生け捕りが望ましいが、やむなくば殺しても構わん。管理局の中に鼠が入り込んでから、しっかりと頼んだぞ」

「はい!」

「はい」


  スピカが早く、そして元気良く返事をした。

  カナンも後に続いて、落ち着いて返事をした。

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