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A lot of stars  作者: 赤秋の寒天男
第三章 無限の彼方
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26話 失われたモノ

 ウミウシ車の雰囲気は最悪だった。

 まるで共通の友人を亡くした後のような……まあ、実際それに近い事件に巻き込まれたのだが、本当に酷い空気だった。


「――――」


 聞こえるのはカタカタと揺れる車体の音。それにウミウシのフガフガとした呼吸音だけ。時間が時間なだけに、外からは人の気配すら感じられない。

 ただただ静かな帰り道だった。


「……シロン、ウミウシを見ててくれ。シリウス、周囲の警戒を続けてくれ」

「分かった、イオ君」

「了解しました、イオ先輩」


 王城までの道のり。そのおよそ半分を通り過ぎたところで、荷台で横たわっていたゲミンガとスピカの意識に変化があった。

 どうやら治療が効いてきた模様。

 イオはそれを察するとすぐに運転席を離れ、後方へ飛び移った。


「大丈夫ですか、ゲミンガさん?」

「ああ……それにしても随分と目の辺りが痛むな。痒いし布を外してもいいか?」

「……どうぞ」

「ありがとな…………って、目の辺りがスースーすると思ったら……先に言ってくれよ……」


 ゲミンガは、意識が覚めたのと同時に自分の体の異常に気付いた。

 そして、自らの眼孔を手でベコベコと押し込んで確認し、疑念を確信に変えたようだった。それはイオの全力をもってしても治せなかった深い傷であり、また身体的な傷であると同時に精神的な傷でもあった。

 それからゲミンガは記憶が途切れる以前の出来事を、糸を手繰り寄せるように思い出していった。


「……ダメだな」


 彼がため息をつくように言い放った「ダメ」という言葉にどのような意味が込められているのか。

 その時のイオには分からなかった。


「スピカは眠ってるか……」

「あ、はい」

「その足だと……寝てた方がいいな」

「そうですね」

「精霊は無事か?」

「あ、今出します。この事件は既にアークトゥルスさんに報告してありますけど。連絡ならご自由に」

「違う」

「……あ、その――」

「俺の精霊はどこだ? お前の『耳』じゃなくて俺の『目』だ。それに『足』も」

「…………もう、逃げました」


 イオの弱々しい言葉を聞いた途端、ゲミンガは腕で顔を覆って勢い良く上を向いた。そして、腕に塞がれていない口から大きなため息を吐き出した。

 その重苦しいため息の最後の方は、ゲミンガの喉が震えて途切れ途切れになっているのが分かった。聞いていて涙が出そうになる、いかにも悲壮感に溢れたため息だった。


「…………なんか、もう、ダメだな」


 そう言い残した彼は、あからさまにふてくされて眠ってしまったのだった。

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